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住野よる『腹を割ったら血が出るだけさ』を読んでみた。

 皆さんは住野よるさんの小説を読んだことがありますか? 私は住野よるさんが今まで描いてきた単行本は全部読みました。

 住野よるさんの小説といえば、最も有名なのは『君の膵臓をたべたい』だと思います。(こちらの作品はアニメ化、映画化もされました。)

ちなみに、映画版は浜辺美波さんが可愛いですぞ。

 君の膵臓をたべたい、このタイトルだけ聞くと衝撃的なのですが、そのまま膵臓をムッシャムッシャと食べるような話ではありません。(それはそう。)この作品を見てタイトルがどういう意味を持っているのか知ることは面白いですよ。

 今回の本は『腹を割ったら血が出るだけさ』というタイトルです。

表紙イラストが綺麗すぎる……。

 タイトルに関してのみ言えば、腹を割って本音で話そうなどとはよく言いますが、その人の本音・本心ってなんだろうみたいな話です。

 この本に出てくる主人公的存在の高校生 糸林茜寧は『少女のマーチ』という架空の小説を読み、それにそっくりの女装しているような男性 宇川逢(小説上では「あい」と呼ばれている)に出会うところから物語は始まります。その小説の物語をなぞるように行動していく二人ですが、実は小説と行っていることが違ったりして……というような話です。

 宇川逢はライブハウスで働いていて、「インパチェンス」というアイドルグループの後藤樹里亜という人物を推しています。糸林茜寧→宇川逢→後藤樹里亜→その他というようにこの本は何回か視点が変わり、全員の視点があったら面白いのにと思う反面、そこまで描く必要も無いかなと思ったりしました。

登場人物リストです。

 糸林茜寧の同級生、上村竜彬が後藤樹里亜の粘着系アンチなのですが、その話の顛末が面白かったり、実は後藤樹里亜と高槻朔奈がお互いに想い合っていたり、アイドル小説としてもレベルが高いように感じられました。(少なくとも朝井リョウの『武道館』を読むよりは絶対面白いはず……。武道館は後味最悪だった記憶しか無いです……。)

 物語の最初の方で糸林茜音は宇川逢とインパチェンスのライブを一緒に見ます。一見、糸林茜寧と後藤樹里亜には何の共通点も無いように見えますが、糸林茜寧は周囲のみんなから「愛されたい」がための言動をしていて、後藤樹里亜はアイドルとしてファンが喜ぶような「作られたストーリーを見せる」ための言動をしていることが次第にわかってきます。それに対し、宇川逢は真逆で基本的に「本音で話す」人柄だということも読んでいる内によくわかってきます。

 仮に自分が愛されたいと思って言動をそうしてみても実際に愛されるかどうかというのはまた別問題な気がしています。容姿などが優れていないとそれは成立しないことなのかなと思っています。

 この本ですごく印象に残っている部分があってそれが後藤樹里亜のこの台詞です。

「分からない。考えたんだけど、きっと本心から望んでることが何かなんて、ずっと分からない気がする。その曖昧の中で生きていこうって、今は思ってる」

住野よる『腹を割ったら血が出るだけさ』より

 糸林茜寧と後藤樹里亜は極度に自分を演じすぎていますが、多かれ少なかれこの人の前ではこういう立ち振る舞いでいようとかそういうのって誰にでもあることなんじゃないかなと思います。私の言動もネットと現実だと結構違ったりするのかなって時々思いますし……。私は基本的にすぐ本音で話してしまうタイプなので完全に宇川逢よりの人間だと思っています。

 糸林茜寧は宇川逢に出会い、小説上の「あい」という人物と同一視しますが、逢とあいの外見が割と違ったり、そんな行動小説には出てこなかったけど?みたいなことを糸林茜寧はしたりします。解釈違いというかもはやこじつけ?感がすごくありますが、そういう思い込みとか刷り込みって割とあるなって思ったり。(私が映画『リズと青い鳥』を見てこれは自分の話だなって思ったり、とある曲を聴いてこれは自分について書かれているなと思ったりしますしね。)

 この本を通して最後にかけて思ったことは本自体は食べ物や飲み物になったりといった直接的な救いにはならないけど、心の栄養にはなるよねってことでした。私は二次創作小説を書く時に自己満足半分、誰かに読んで欲しい半分ぐらいの気持ちで書いていますが、誰かの救いになれば良いですね。

 最後に私的に住野よるさんのオススメ小説を載せておきます。

麦本三歩が一番読みやすいと思います。

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