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ダンス:Sans

2019/10/20 @La maison des Métallos

(憧れの)パリ8大学舞踊学科の、リソンス(学部)の今年度のディレクターを務めるLaurent PICHAUDと、Théo KOOIJMAN、Olivier SCHRAMの三人による作品。

パリ8大学の修士でありダンサーである方に教えていただいて、観に行った。

Laurent PICHAUDはArtiste chercheurとパリ8大学のHPでも紹介されているのだが、やっぱり作品も作るし演るんだなあ、すごいなあと思った。デボラ・ヘイとの協働、そして研究で知られているよう。↓Laurent PICHAUDさんのパリ8大学でのHP。

Théo KOOIJMANさんは画家でありダンサー。検索したら、画家としての彼のHPが一番に来たので、まさか同姓同名のアーティストがいるのかと思ってびっくりした。絵の方は、マティスに似ている画風をもっているようだった。なかなかいない、トリッキーな、マッドサイエンティストっぽい雰囲気を醸し出す人だった。

Olivier SCHRAMさんは、いまいちどういう人なのか分からない。。

Sans(=without、〜なしで)という、シンプルな題名の通りの舞台だった。三人の普通のおじさんが普段着で出て来る。筋肉なしの体である。ヒョロおじさんと中肉中背おじさんと言う、頼りないラインナップの三人。照明も地明かりのみ。音楽もなし。客席もあまり暗くなる訳ではない。

今回の劇場は、正方形に近いくらい、幅が狭く、奥行きが深いステージだった。だから客席の傾斜も強かったのかな?真ん中くらいの列で見たけど、少し覗き込むような感じだった。奥行きがちゃんと見える、という感じ。

「sans causes et sans conséquences」とパンフレットに載っている通り、とても平板なリズムで進んでいく(ように見える)ダンスだった。なんの事前知識もいらないし、何かの仄めかしや物語の起承転結がある訳でもない。三人が55分間コミカルな動きをするだけ、というダンスである。見ていて楽しいダンスだった。どんなパフォーマンスも楽しいのだけれど、何にも考えず楽しい、みたいなのは多くない。

だけどそこに、どこか狂った感じがない訳ではない。愚鈍で頓馬なロバ、みたいな、なんでこの人たちこんなに一生懸命変な動きしてるんだ?まるで小学校の運動会のお遊戯体操を、おじさんたちが真剣に挑戦してるみたいじゃないか。ハアハア言ってるし、汗めっちゃかいてるし、しんどそうだし。可愛くね〜〜、、、だから面白いんだけど、特にThéo KOOIJMANさんとか、怖かった。面白いことを観客に見せているのだけれど、観客と目を合わせる訳ではなく、どこか行為そのものに埋没している感じがあった。

途中で、三人が一旦下がり、衣装を変えて再び登場し、先ほどやった動きを同じ手順で、しかし少し早送りでやり始める。それだけなんだけど、なんだか混乱してしまう。同じおじさんなんだけど、違うおじさんになっちゃって認識できなくなってしまう。目がバグっちゃう感じ。「繰り返す」という表現が好きなのだけれど、衣装を変えるだけで、変な繰り返しになるんだなと思った。

話の筋がある訳ではないのだけれど、人の知覚(特に視覚)の隙間をちょびっと突き刺して渋滞させちゃう、そんなダンスだった。

結構アクロバティックな動きもしていたので、おじさんたちはものすごく顔が真っ赤でハアハアしていた。

舞台鑑賞、パフォーマンスにおける「労働」「消費」の問題も少し思い出した。




全然関係ないけれど、「火の丸相撲」と「鬼滅の刃」を最近読みました。罪悪感にかられながらですが、とっても面白かったです!!!


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