【シナリオ】缶コーラの約束

シナリオセンター通信基礎科課題12「卒業」

金髪リーゼントの高校生・隼人には任務があった。「姉ちゃんを守る」。そんな姉ちゃんが急に結婚すると言い出した！　隼人は早速その男の身辺調査を始めます。

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＜人物＞
吉田隼人(17)　高校2年生
吉田隼人(7)　小学2年生
吉田隼人(12)　小学6年生
吉田莉麻(27)(22)(17)　隼人の姉
松原大輔(36)　莉麻の婚約者
松原唯(15)　松原の娘
大森卓也(17)　隼人の友人
吉田竜次(45)　隼人と莉麻の父
吉田美里(52)(47)　隼人と莉麻の母

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〇タコ公園・タコ滑り台・上(夜)
タコの足が滑り台になった大きな遊具。
吉田隼人(7)と吉田竜次(45)が座っている。
隼人の手には缶コーラ。

竜次「隼人、今からお前に任務を与える。
　　　父ちゃんの代わりに姉ちゃん守れ！」

隼人、立ち上がりコーラ飲みゲップ。

隼人「オレ！　姉ちゃん！　守る！」
　　　
〇吉田家・居間
床に伸びている男(22)。
呆気に取られている吉田莉麻(22)と吉田美里(47)。
莉麻、ハッと慌てて男に駆け寄る。
吉田隼人(12)、突き出した拳を戻し、
仏壇前に座ってりんを鳴らす。
竜次の笑顔の写真。

〇バス・車内(朝)
吉田隼人(17)、金髪リーゼント。
隣の人のスマホを覗く。
『女子高教諭、強制わいせつ容疑で逮捕』の文字。
隼人、渋い顔。

〇双葉東高校・正門（朝）
歩いてくる隼人。
すーっと離れる生徒達。
前にスマホを見る大森卓也(17)。

隼人「てめぇ何見てんだ、こら」
大森「明日暇？　ＳＮＳで繋がった子達と…」
隼人「あー明日はだめだ。家にいろって」
大森「姉ちゃんが？」
隼人「お前、うち盗聴してる？」

〇吉田家・居間
ひきつった隼人の顔。
吉田莉麻(27)の隣に松原大輔(36)。
隼人を小突く吉田美里(52)。

隼人「結婚…だと…？」
美里「お義兄さんが先生なんてラッキーよ！」
隼人「先生…？」
莉麻「橘女子高校。隼人、知ってる？」

仏壇前に崩れ、りんを鳴らす隼人。

〇橘女子高校・正門・前（夕方）
『橘女子高校』の銘板。
電柱の陰から睨みをきかす隼人。
不満げにスマホいじる大森。
自転車の警察官が通る。

警察官「君たちそこで何してるの？」
隼人「ああ？　立ってるだけですけどぉ？」

すごんで警察官に詰め寄る隼人。

松原「隼人君、待たせて悪かったね」

隼人、振り返ると松原。

隼人「……待ってねぇし」
大森「なんだ。全然いい人じゃん」

仏頂面で歩き出す隼人。

〇繁華街のカフェ（夜）
女子高生とパンケーキを食べている制服の大森。
ふと横を見る。

〇吉田家・居間（夜）
正座の隼人を仁王立ちで睨む莉麻。
見物中の美里。
隼人のスマホが鳴る。

隼人「あ！　大森だ！　もしもーし…」

逃げるように出ていく隼人。
ため息つき、仏壇前に座る莉麻。
笑顔の竜次の写真。

莉麻「もう！　お父さんのせいだ！」

〇同・前（夜）
スマホを手に飛び出してくる隼人。

大森の声「おい、未読無視すんな！　殴るぞ」
隼人「え？　ちょ…待て待て！」

とスマホのメッセージを開く。
松原と唯がカフェで向き合っている写真と、
腕を組んで歩いている写真。

隼人「なんだ、これ…」

〇同・居間（夜）
入ってくる隼人。
茉莉と美里が一緒にタブレットを見ている。

隼人「…もう俺、解放…？」
莉麻「ん？　なんだっけ？　ねぇ見て見て」

とタブレットを見せる。
ウエディングドレスを試着した莉麻の写真。

隼人「……出かけてくるわ」

出ていく隼人。

莉麻「あ、ねぇ…」

〇タコ公園・タコ滑り台・上（夜）
スマホを見つめる隼人。
ＳＮＳの編集画面。
『Ｔ女子高校教師Ｍの本性』の文字と
加工した松原と唯の写真。
隼人、画面見つめ、投稿ボタンを押す。

〇双葉東高校・正門・前
不機嫌そうに早歩きの大森。追う隼人。

隼人「なんでお前がキレんだよ！　え…」

松原唯(15)、ずんずん大森の前に進み、

唯「あれ、あんたでしょ？」
大森「…隼人、お前、殺す」
隼人「え？」
唯「あの投稿、続報出してくれる？
　　Ｔ女子高校教師Ｍの本性は、
　　娘とパンケーキデートしてくれる
　　優しい父親って」
隼人「…娘⁈」

隼人を睨む唯。

〇ファミレス
隼人、大森と向かい合う唯。

大森「削除して謝罪投稿した。あとは知らん」
唯「あー、私の叔父さんになる人が
　　こんなバカとかマジ終わった」
隼人「娘いるって言わねぇ方が悪ぃだろうが」
唯「バカなの？　叔父さんにだけ
　　言えなかったってことでしょ？
　　莉麻さんかわいそ」
隼人「自然に叔父さん言うなや」
唯「私はお父さん信じてるもん。
　　お父さんが選んだ人なら間違いないって思う」
隼人「…別に…俺だって…」
唯「それに、いざというときは、
　　私が援護射撃するし。陰ながらも強烈に…」

と隼人を睨む。
大森に隠れる隼人。

唯「で、叔父さん。今回の件、
　　どう落とし前つけてくれるんですかぁ？」
大森「ＪＣの勝ちだな」
隼人「……」

〇タコ公園・タコ滑り台・中（夜）
タコの中に隠れる隼人と唯。小声。

唯「なんで隠れんのよ、叔父さん」
隼人「心の準備とか…色々あんだよ！」
莉麻の声「呼び出しといて何してんだろ」

〇同・同・上（夜）
莉麻と松原。手に未開封の缶コーラ。

松原「缶コーラなんて久しぶりに買ったな」
莉麻「お父さんとよくここで飲んでたなぁ」

コーラの缶を見つめる莉麻。

莉麻「あの子あんなかっこしてるの
　　　お父さんのせいなの。
　　　コアリクイの威嚇よ。わぁー」

と両手上げてアリクイの威嚇ポーズ。

莉麻「お父さん死んじゃった時、
　　　俺が父ちゃんの代わりだって
　　　近所中言って回ったの」

ふっと笑って缶を見つめる莉麻。

〇同・同・中（夜）
隼人「……」

棒読みの莉麻の声。

莉麻の声「だからねーあの子が
　　　　　賛成してくれないからー
　　　　　あなたと結婚できないのー」
隼人「！」

外に飛び出す隼人。残される唯。

〇同・同・前（夜）
隼人を待ち受ける莉麻と松原。

莉麻「もぉー、やっと出てきた」
隼人「え…」
松原「唯も出ておいで」

おずおずと出てくる唯。

莉麻「かわいい姪っ子ともう仲良くなったの」
隼人「かわいくねぇよ！」
松原「今なんて？」
隼人「いや…あの…」

松原、隼人の前に進み出て姿勢を正す。

隼人「…んだよ？」
松原「責任もって君の任務を引き継ぎます。
　　　だから、莉麻さんと結婚させてください」

頭を下げる松原。

隼人「……」

隼人、莉麻のコーラを奪って開け、
ぐっと飲み、盛大にゲップ。

唯「最っ悪！」
隼人「お前なぁ！　姉ちゃんが母ちゃんになったら
　　　大変だからな！　覚悟しろ！」

隼人、缶コーラを高く掲げる。

隼人「このコーラに誓いますか？」
莉麻「……」

顔を上げる松原。

隼人「今の発言、このコーラに誓いますか⁈」

松原、缶コーラを開けて同様に掲げる。

松原「誓います」
隼人「……乾杯」

缶を合わせ、コーラを飲む隼人と松原。
コーラを飲む隼人を見つめる莉麻。

莉麻「……」

〇（回想）同・同・上（夜）
吉田莉麻(17)と竜次。
莉麻の手に缶コーラ。

竜次「あいつ俺に似て不器用だからな～
　　　ちゃんと見届けてやってくれよ？　な？」
莉麻「嫌でーす。自分で見届けてくださーい」

コーラを飲む莉麻。

竜次「どんな男になるかなぁ…」

ごくごくとコーラを飲み続ける莉麻。

〇元のタコ公園・タコ滑り台・前（夜）
ふっと微笑む莉麻。

隼人「んだよ」
莉麻「見届けてるだけ」
隼人「…意味わかんね」

〇チャペル
開く扉。
ウェディングドレスの莉麻。
隣に隼人。黒髪短髪、スーツ姿。手に竜次の写真。
ゆっくりと進む隼人と茉莉。
隼人、莉麻の手を松原に手渡す。
松原と見つめ合い、笑顔になる莉麻。
隼人、写真の中の竜次と同じように笑い、
二人を見つめる。

＜終わり＞

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先生からのコメントを受けて指定枚数を気にせず修正しています。そして、お気づきだろうか、隼人と莉麻が3時代分いるということに。大忙しストーリー爆誕笑。こりずに本科でもう一回爆誕させてる、大忙しストーリーを笑。

さて、こちらで基礎科課題は終了となります。それに伴いまして、ここまで毎日投稿しておりましたが、ここからは少しペースダウンいたします。もしかしたらシナリオ以外も投稿するかも。

というわけで、シナリオセンター通信基礎科課題12「卒業」でした。ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。