【シナリオ】桜を描く

シナリオセンター通信基礎科課題9「おじさん」

佐野亮平45歳。普通の会社員。会社では空気の読めない課長。そんな亮平がネイリストの翠と出会い、ネイルアート習い始めます。そこには亮平のある想いが…。

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＜人物＞
佐野亮平(45)　大和商事課長
久住翠(32)　ネイリスト
久住春斗(6)　翠の息子
佐野幸(78)　亮平の母
遠藤香菜(25)　亮平の部下

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〇大和商事（夜）
パソコンに向かっている佐野亮平(45)。
すらっと長身で整った顔立ち。
女性社員たちに背中押され、
遠藤香菜(25)が恥ずかしそうに来る。

香菜「あの…課長も行きませんか…？」

顔を上げる亮平。
帰宅支度の済んだ社員たちが
ドア前にたまっている。
亮平、財布からお札を数枚出し、

亮平「気を使わず、楽しんできてください」
香菜「…結構です」

と不服そうに出ていく。

亮平「？」

〇ふたば公園
ベンチに亮平。
満開の桜の下で遊ぶ親子を眺め、
ふと流れる涙。
亮平をじっと見つめる久住春斗(6)。
春斗に気づき、慌てて涙を拭う亮平。
春斗、不意に亮平の頭を撫でる。

亮平「え？」

春斗、少し歩き出して振り返り、

春斗「こっちだよ」
亮平「……」

〇久住家・玄関～サロン部屋
マンションの一室。
遠慮がちに春斗に続く亮平。
玄関脇の部屋に目をやる。
一席のみのネイルサロン。
桜が描かれたネイル見本が並んでいる。
立ち止まり、見つめる亮平。
久住翠(32)が来る。

翠「おかえり、春斗。…え、誰？」
春斗「僕、ちゃんとよしよししてあげたよ」

見本の桜ネイルを見つめている亮平。

翠「あの…ご予約いただいてます？」
亮平「……こちらのやり方…
　　　私に教えていただけないでしょうか？」
翠「え？」
亮平「どうか、お願いいたします」

深々と頭を下げる亮平。

翠「……」

〇大和商事
パソコンに向かう亮平。
香菜が来る。かわいいネイルをしている。

香菜「課長、資料ご確認お願いします」
亮平「あ、はい。…素敵ですね」

と香菜のネイルを指す。

香菜「え？　…ありがとうございます！」

飛び上がらんばかりに歓喜の香菜。
全女性社員が驚いた顔で見ている。

〇久住家・LD
壁に春斗が描いた翠と春斗の絵。
食卓でネイル練習中の亮平。
道具の持ち方等直す翠。
隣で勉強を始める春斗。

〇ふたば公園
満開の桜が新緑に移り変わる。

〇久住家・LD
食卓でネイル練習中の亮平。
亮平の隣で勉強中の春斗、亮平をつんつん。
耳打ちする亮平。
睨む翠。慌てる二人。
亮平のスマホが鳴る。
『旭総合病院』

亮平「……」

〇旭総合病院・病室
ベッドに佐野幸(78)。
亮平、翠、春斗。

幸「こんなにかわいいお友達がいたのね」
亮平「僕にだってちゃんと友達はいるよ」

翠、ふとサイドテーブルを見る。
写真。桜の木の下に７歳の亮平と幸。

〇道
歩く春斗。
少し後ろを歩く亮平と翠。

亮平「今日は申し訳ありませんでした」
翠「なんで公園で泣いてたの？」
亮平「え？」
翠「泣いてる子にはよしよししてあげなさいって
　　私の教えを守ったのよ、春斗は」
亮平「…以前、母に言われたんです。
　　　写真を撮らせてって。
　　　友達と会って写真を見せ合うからって」
春斗「ママ～、タンポポあるよ～」
亮平「そういう時の写真て、
　　　そういう写真じゃないですよね」

タンポポを手に走ってくる春斗。

亮平「ふと思うんです。
　　　私は息子として母に充実した人生を
　　　送らせてあげられたのか」
翠「……」

〇久住家・LD
時計を見る翠。
ふてくされて机に突っ伏す春斗。
翠、スマホを手に取る。

〇旭総合病院・病室
ネイルバッグを持った翠と春斗が来る。
眠っているような幸。
枕元に座る亮平。

亮平「……何もしてあげられませんでした」
翠「……」

病室を出ていく翠。
春斗、幸に近寄り、

春斗「寝てるの？」

亮平、力なく微笑み春斗の頭をなでる。
戻ってきた翠、ネイルバッグを開く。

翠「看護師さんに言ってきたから」
亮平「…でも…私はまだ…」
翠「あなたがやるの」
亮平「……」

×　×　×
幸の爪を丁寧に整える亮平。
見守る翠と春斗。
筆を握る亮平の手が震える。
亮平の手をぐっと掴む翠。
亮平、息を整え、
幸の爪にゆっくりと桜を描いていく。

〇ふたば公園
ベンチに亮平と翠。
遊んでいる春斗。

翠「私、幸せだよ」
亮平「え？」
翠「春斗がいてくれるだけで、最高に幸せ」
亮平「……」
翠「一応、気休め。春斗～帰るよ～」
亮平「…ありがとうございます」

春斗、駆けてきて亮平に飛びつく。

翠「こちらこそ」

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提出した際は、会社での亮平は描いていませんでした。先生のコメントを受けて追加してみましたが、もっと堅物にした方がよかったかな。

数年前に、友人のネイルモデルをやりました。ネイルモデルとは、ネイルの検定試験に向けた練習や試験の際に手を貸す人です（正しい定義はわかりませんが、経験上ざっくり言うとそうなります）。その友人に声をかけられるまではネイルなんて全くやったこともないし、興味もありませんでした。

その頃かなり暇だったので、必要とあらばネイルの学校にもその子の自宅にも行っていました。試験6回くらいあったかな？　その結果、ネイルに関する技術は一つもないのに知識だけはある人になりました笑。

その経験がなかったら、このシナリオは100％書いていないでしょう。やっててよかったネイルモデル！

というわけで、シナリオセンター通信基礎科課題9「おじさん」でした。ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。