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人生はオーケストラなんだよ

ミューレの中の子どもたち(大人の生徒も巻き込まれてるけど)の人間関係は、私が理想とする「本当に差別のない助け合いの世界」の縮図になっている。

4歳くらいになったら、日常的に起こるさまざまなことを、舞台上のオーケストラに例えて話して聞かせる。舞台上のオーケストラを、小さな社会に見立てて。

「あんたたちはね、舞台で演奏するオーケストラなんだよ。

もし、早とちりしてしまう子がいて、指揮者が「さんはい」って合図出してないのに演奏を始めちゃったとするよね?そしたらどうする?

「あの子が間違えたから!あの子のせいで!!」って舞台上で立ち上がって指差すの?そしたら誰が幸せになるの?お客さんはいい気持ちで音楽を楽しめるの?

何回言っても早とちりをやめられない子がいるかもしれない。そうしたら、あなたたちの学ぶべきことは、「この子は早とちりをしがちだ」ということです。みんなで、その子が早とちりをしてしまっても演奏に影響がない工夫を考えればいい。

先生にとって、演奏を始められる用意が整っていれば、それまでの経緯はどうでもいい。何か演奏を始められない理由があっても、誰のせいか犯人探しをすることには何の意味もない。

それよりも、お客さんに気づかれないように、仲間の失敗を全力でフォローしなさい。」

いつもの通り、グループワークをしている最中に、Kちゃんがいかにも気を悪くした顔でまったく話し合いに参加していなかった。

苦労しながらもグループワークは終わり、みんなはその成果に必死で「とりあえず終わった」とホッとした表情でいた。

私は、「今から大事なことを話すから、座って。」と言って、「Kちゃん、今、気分悪いら?」と言った。とたんにKちゃんは涙ぐんで、他の子は黙りこくった。

「何故、Kちゃんは気分が悪いと思う?」と言ったら、Hちゃんが「先輩たち(うちの小学生クラスは先輩と後輩、2クラスをくっつけた構成になってる)が全然話しかけてくれなかったから。」と、思わず言わずにいられなかったという様子でKちゃんの代弁をした。

私は、Kちゃんの顔が沈んでいった状況と、なぜHちゃんはそれに気づいたかということをかみくだいて話して聞かせた。

「仲間だったらそこに気づかなくちゃいけないよ。」と。話を聞きながら、Rちゃんはそっと涙をぬぐった。先生に怒られたからじゃない、Kちゃんの気持ちを本気で思いやったからだ。

ここに登場するKちゃん、Hちゃん、Rちゃんって、みんな、「この子だよ。」って言うと、お母さんたちは驚くと思う。そういうタイプじゃないからだ。

ミューレの子どもたちの行動は、「そんなタイプじゃない」って言われることが多い。でも私は、これが本来の姿だと確信している。そこには「人からどう思われるか」が何も介在していないから。


これは、2009年の教室の様子です。2022年になった現在、わたしは、このような指導に加え、Kちゃんにも指導をします。

Kちゃん自身が、ミューレの外でも自分から思いを遂げられるようにするためです。

どの子も残らず、自立してほしいからです。

おとなしいから、とか、自信がないからとか関係なくて、どの子も「自分のままで自分らしく、思ったように生きたい」と思っていると、わたしは信じています。だから、そのためのサポートをします。

サポートではありますが、いつも優しいとは限りません。厳しく接することもあります。わたしのことを好きじゃなくてもいい、子どもの人生の方が大事だからです。


浜松市で生きる力をつける音楽教室ミューレ↓


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