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やりたいことを「やりたい!」と言える子に

2008年、教室を作ってから4年目かな?発表会に向けてレッスンをしていた様子です。

2008/03/19 涙そうそう

数年前に、Iちゃん(当時、年長さん)のお兄ちゃんが事故で亡くなった。
私は、3人兄弟のうち、亡くなったおにいちゃんをのぞく2人ともレッスンで見させてもらっていて、その途中には、お母さんには言えない「兄弟を亡くした子の気持ち」を素直に話してくれたことが何度もあった。

特別な想いで見つめ続けたIちゃんが、今度のピアノ発表会で「涙そうそう」を歌うという。
この曲は、森山良子が亡くなった兄を想って作った曲なので、いつか歌って欲しいなと思っていたが、まさかこんなに早くとは・・・。
お母さんともども、少々心配したけれど、「歌いたい」というIちゃんの気持ちを尊重することにして、やるからには真正面からこの歌に向き合っていくことにした。

とはいえ、練習した段階から、どんな気持ちで歌わせようかと思っただけで涙が止まらない。

1回目のレッスンのとき、歌詞について話し合った。
「晴れわたる日も雨の日も、浮かぶあの笑顔」のところ、本当はfで歌うんだけど、せっかく浮かんだ笑顔、消したくないよねーってことで、すごく丁寧に歌うことになった。
「思い出遠くあせても」のところ、

「お兄ちゃんのこと、顔は写真とか見ると覚えているんだけど、声は忘れた。」

「そうだよね、覚えておきたいと思っても、どうしても忘れるよね。」

これって、肉親を亡くした者同士にしか分からない、悲しいけれど現実の話だと思った。
忘れるから、人間って生きていけるんだよな、って。

それから4回目か5回目のレッスン。
今日、突然、歌い終わったIちゃんが急に泣き崩れた。
お兄ちゃんの卒業式で、学校へ家族みんなで卒業証書を取りに行った、とのこと。
クラスメートみんなに「がんばれ」っていうメッセージカードをお母さんと一緒に書いたとのこと。

そのときは「がんばれ」っていう気持ちだけだったんだけど・・・、なんか、この歌を歌っていたら・・・、と言って。

お母さんの前では泣けないってこと、あると思う。
それは、進ちゃんを見ているとよく分かる。

「Iちゃん、人の気持ちを考えて我慢できるっていうのはIちゃんのすごく良いところ。
でも、我慢のしっぱなしだと、いつか崩れてしまうから、どこかで最後は泣くんだよ。

Iちゃんはピアノがんばってるからやめるとは思ってないけど、もし、ピアノやめてしまっても、泣きたくなったら先生のところにおいでね。
いつでも待ってるからね。

発表会まで、一応の歌の練習はするけれど、当日はさ、もう、どんな歌になってもいいからさ。
泣いてもいいと思う。
先生も泣くかもしれないし。
でも、ふたりで、お空に届く歌を歌おうよ。

Iちゃんより歌のうまい子はいっぱいいるけど、今度の発表会で、この歌を本当に歌える子はIちゃんしかいないと思う。
だから、思ったとおりに歌って、それをお兄ちゃんに聞かせてあげようね。


先生、なんとなく、Iちゃんの気持ち、分かる。
先生んちのきぃちゃんも、土曜日、卒園なのね。
でも、今は泣けないのね。
だから、その気持ち、すごく分かる。
先生も、終わったらすごく泣くと思うんだー。
まだ、自分がどんな気持ちになるのか想像もつかないけど・・・。」


なんていう話をして、ふたりでレッスン室にしゃがみ、私はずっとIちゃんの背中をさすっていた。

発表会の日、ぜひ、Iちゃんの歌を聞いてください。
私の自慢の教え子です。

つい先日、このIちゃんに偶然ばったり出会って、爆笑しながら写真を撮りました。今年から社会人1年生です。

大学に入った後、サークル活動で「手伝ってほしい」と言ってやってきたこともありました。

本来なら死なないはずの年齢で亡くなった家族を持つ気持ちを、少しでも共有することができて良かったと思っています。

2008/03/20 楽器を作った

発表会へ向けて、GREEN2の楽器つくり。
朝9時にお弁当を持って、レッスン室に集合。

集めてもらったダンボールを、好きに切り刻む。
私は・・・、ノータッチ。
楽器を見本として見せることもせず。
突拍子もない楽器ができたら、それはそれで面白いから。

設計が得意な子、段ボールカッターで切るのが得意な子、人のことばっかり気にしてる子、一人で黙々と作る子、ゆっくりな子、ディテールにこだわる子、個性が出て面白い。

SKちゃん、レッスンでも、習得がいつもゆっくり丁寧で、こっちが気を使ってしまうけど、本人は「遅い」ということを全然気にしていない。

今回も、一人だけお弁当のあとまで作ってて、しかも完成しなくて、そしたら、家に帰ってからすごく立派に細かいところまで作りこんで、次の日、完成させて遊びに来たついでに見せてくれた。


私は本当に無用で、途中で、「色ってどうやってつける?色鉛筆とかクレヨンとかしかないけど・・・。」と言ったら、

「そんなので色が付くわけないじゃん。
カラーテープ買ってきて。」

と命令され、「あ、はい。」と、近所のスーパーに買いに行った。
カラーテープだけじゃなくて、キラキラした折り紙とか、
ついでに美味しそうなお団子をみんなに一本ずつ。

今年のGREEN2クラスの発表は、Jackson 5 の「I want you back」をちょっと編集して、

・リトミックの課題「補足リズム」と「拡大・縮小」を使った実践
・英語の歌
・HIP HOP ダンス
・段ボールで作った楽器を使って、エアーバンド

という構成にした。

このSKちゃんにも、先日ばったり会いました。コーヒーを売ってました。
たくさん買って飲みました。

大学生って言ってたけど、たしか一度、高卒で就職したはず。今もこのときと同じ、ゆっくり、自分のペースなんだね。

2008/04/03 発表会リハーサル

朝から、会場となる天竜壬生ホールにて、発表会のリハーサル。
ふと思いつきでリハしてみたが、元々予定にはなかった。

これをやらずして100人単位の発表会をやろうとしていた私とyumi先生、恐るべし・・・。

段取りがダメダメで、バタバタしてしまったんだけど、まぁ・・・、これだけの規模の発表会をたった二人で今まで計画してきたんだもの、よくやった方だと思う。
同じ事実が目の前にあるとき、私もyumi先生も、

「○○しかできなかった。」

ではなく、

「○○もできたー。」

と喜ぶほうだ。
こんな風にして、今までやってきたんだよな、と思う。

こんないい加減な二人について来てくれて、足りない部分をどんどんフォローしてくれるスタッフにも感謝。
ふつう、「こんなんで・・・大丈夫・・・?付いていけないよ!!」って思うところ、「まぁ、やるしかないですね!」って言ってくれるところが好き。

いっぱいいっぱいなところ、一生懸命働いてくれた保護者役員さんたち、どうもありがとう!
あとからメールを入れたら、「役員として参加できて楽しかった。」とか、「先生、休んでね。」とか・・・、いい人ばっかり。

PAさんからも、「クオリティに差は出るけれど、ある機材でなんとか対応します。」ってメールもらった。

リハ後、レッスンに来た子は、「すっごく楽しかった~~!!私のこと、見て!見て!って思ってた。」とか言ってた。

役員以外のお母さんにも様子を伝えるメールをした。
そしたら、「楽しかったみたいです~。次のリハはいつ?ってすっかり、リハ好きになってます~。」とか。


まぁ、とにかく、イベントとしては落第点ないつもの私たちの発表会、何に支えられてるって、「人」。

今週末、いよいよ、高校生実行委員会がすべてを企画した公演の本番です。

先々週、このときのようなリハを行いました。朝から夕方まで、みっちりと。

このリハを初めて体験した小5に「どうだった?」と聞いてみたら、「すっごく、すっごく楽しかった!!」と言っていました。リハが楽しいなんて、うらやましいです。

わたしの教室の発表会は、中学生以上で「出たくない」と言う子がいません。・・・というか、みんな「出たい!出たい!」って言います。すごくおとなしい子も。引っ込み思案な子も。性格に関係なく。

小4くらいまでは「出る?」って聞くと、「えー、考えとく」とか「どっちでもいい」とか、煮え切らない返事をします。

小さい頃から、こんこんと、「やりたいならやりたい、って素直に言わないとダメだよ」としつこくしつこく教えていると、中学生くらいから「やります」「やりたいです」って言えるようになります。

反応の薄い子が多くて、本当はやりたくないのかな?って思うと、あとになって「あのとき、いいなぁって思ってた。すごくやりたかった」と言うこともよく聞きます。

わたしの息子たちは、本当はやりたいことを「やりたい」って言えないことはありません。小さい頃からの積み重ねだと思います。

「やりたい」って言えた方が人生は楽しいし、チャンスを逃さずに済みます。

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