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静寂は誇り

幼児たちが調子に乗っていると、すごくうるさいです。わたしが話をしようと思っても、全く聞いていない。

そんなとき、「静かにしなさい!」と大きな声を出して言うことを聞かせていると、いつまで経っても「聞こう」という自分軸の行動パターンにはなりません。

聞いてほしいのは先生じゃなくて、聞かなくても先生は困らない。今から起こる面白いことを聞きたいのは自分。だから「聞く」と思わなくては。

それを幼児から教えるにはどうしたらいいか。

わたしは、「話を聞きなさい」というタイミングでは、まぁそこそこにしておいて、何か楽器を演奏するときに、ここはチャンスだと思って、指導をします。

幼児全員に鈴だの太鼓だのを持たせると、ずーっとバンバン、ジャンジャン、音を鳴らしています。

「あのね、ここはコンサートホールなのね。お客様が入ってね、みんなの演奏を楽しみに待ってるの。
みんなはステージに乗っている音楽家たちなのね。それで、始まる前に、今みたいに、バンバン、ジャンジャン、音を出していたら、お客さまはどう思う?」

「うるさい〜!」「聞けない〜」

まぁ、幼児なりに「それはダメだよね」的なことを言う。この段階では、あんまり分かってなくてもいいのです。

それで、わたしは子どもたちと向き合い、指揮者のように黙って両手を広げます。「さんはい」と言う前のように。

そうして、じーっと待ちます。子どもたちは、わたしの顔を見て、徐々に「あれ?なんか雰囲気が・・」と気付き始めます。

わたしは息を吸って、「さんはい!」と言おうとします。すると、また、誰かが「バン!」って音を鳴らします。

わたしはまた、両手を広げ、じーっとします。

それを繰り返していると、4才や5才の子が10人以上いるとは思えないような静寂が訪れる瞬間が来ます。

そのとき、子どもたちの顔には「この静寂を作ったのは自分達だ」という誇りが表れます。

わたしは、毎年、この瞬間をとても大切にしています。

先生が「静かにしなさい」と言わなくても、自らの力で、集団で力を合わせて静寂を作ることができる。そのことを誇りに、子どもはバッと成長します。


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