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私と百人一首

小さい頃、おばあちゃんが坊主めくりを教えてくれたのが、百人一首のかるたに触れた最初だった気がします。母は専門職は理系なのに文学に詳しくて、私が中学国語で「春はあけぼの」を習った頃、清少納言や小式部内侍のような「即座に機転が利く女性」の逸話をよくしてくれました。

高校1年生の夏休みの宿題で百首覚えてくるように言われ、あいうえお順に並べられたプリントを見て、昼夜暗唱の練習をしていました。その時は、詳しい意味も時代背景も作者もよく分かっていませんでしたが、何度も繰り返し声に出しているうちに、少しずつ、音の響きが気に入った歌や、情景を思い描いてうっとりする歌が、心に残るようになりました。母の影響もあって、この頃は小式部内侍の「おほえやま…」がお気に入りでした。

理系の学部へ進学することを決めた私は、大好きな古典や歴史に勉強時間を十分当てられず、それから大学在学中、就職後、しばらく古典から遠ざかっていました。

結婚し子供ができ、時短勤務をすることにして、ようやく時間が少しできるようになった頃、たまたま友人が百人一首(競技かるた)の漫画を貸してくれました。引き込まれてすぐに読破し、それからまた百人一首の事が知りたくなって、電子書籍で田辺聖子さんの本を読みました。これは高校生の時読みかけて全部読めていなかったもの。あれから20年ほどたって色々な経験と知識を得てから読むと、以前とはまた違って本当に面白く、作者の一人一人がまるで身近な知人かのように感じられ、すっかり魅了されてしまいました。

今は、仕事と育児の息抜きとして、百人一首、そこから派生して万葉集や古今和歌集、平安文学作品をちょいちょい読んで楽しんでいます。記憶力が低下して、なかなか人の名前や血縁関係が覚えられないのが困りますが。

和歌を読むとき、その時代の作者の見えていた景色はどんなだったろう。日々どんな生活をしながらどんなことを感じていたのだろう、と思いを馳せます。歴史のなかの出来事を辿る時、その時代に生きた人々の思想や感情を添えていくと、なんと生き生きと感じられることでしょうか。紀貫之や藤原公任、藤原定家等が、書き記し、残そうとしてくれたこと、それを継承して残してきた多くの人々がいたことで、1000年以上前の作品を今私が目にすることができる。これはなかなか凄いことだと思います。

これから少しずつ、百人一首についてのひとりよがりの感想や思いを書いていけたらいいなと思います。

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