小さな劇場
空洞のふちをなぞる指は水色
少年と青年はピアノの前で瞬きする
深い呼吸を試してみる
少年の白い襟、青年の黒い釦
「夢にあなたが出てきました。馬車に乗っていて、花を抱いていました。ベルベットのような偽物のようなすべすべの花びらのうえを一滴の雫が滑って、」
「昨日のテレビの話をしよう。君によく似た豹が出ていた。獲物を捕え、口に血を滴らせていた。……ねぇ、私たちは同じ話ばかりしているね」
伏せられた少年文庫、ミルクティーの紙パック
「同じ話でもいい。何度でも話しましょう。きっと来年はこんな話しやしないんだから」
毎日はつまらないけれど、つまらない積み重ねで出来上がる僕ら。
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