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◆詩◆群れ

バス停に牛の群れがやってくる
牛たちは真っ直ぐ前を見つめ
歩いていく
牛の群れは途切れず
バスは来ない
群れの中のひときわうつくしい一頭に
君が乗っていた
いつもより背筋を伸ばして
どこか異国の王のようだった
君は私に気づくことなく
牛に乗って去っていく
もう会えないのだと思う
一緒にお茶をすることも
カレーを食べることもない
音楽の話をすることもないのだろう
私やこの街や他のあらゆることを捨て
君は牛とともに行くことを決めたのだ
溢れるものが涙になって排泄される
夕暮れのバス停
置いてけぼりの私はこどものように
わんわんと泣いた

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