(第8回)「プログラミングやりたくない!」〜下から目線のコーディング武者修行〜
プログラミングの学習を始めて気がついたこと:
プログラミング用語が「意味すること」は書いてあっても、「その用語の由来」は書いてない
これが自分にはとってもフシギ。だってどんな言葉だって、「誰かが考えた」んでしょ?と。
例えば「初期化」にしたって、それがInitializeの日本語訳というのはワカル。Initializeでやることもワカッタ。でも「なぜそれをInitializeと呼ぶのか」はワカラナイ。
ワカラナイままでは道具として使いにくいので、なんとかその由来を特定したい。
ところが冒頭に述べたように、Tech人は本質的に「用語の由来」がなくても済むので、「用語の由来」を説明する必要がそもそもない。
何で調べたらTech用語の由来がわかるんだろうか?と悩みに悩み、ようやく「Tech用語の由来を調べられるツール」が見つかる。
そのツールとは、ズバリ『OED』! Oxford大学出版局が刊行する、「世界一の英語辞典」Oxford English Dictionary!!
英語をかじった人なら聞いたことがある、伝説の英語辞書。まず質量が半端でない。
例えば第5巻(Vol. V)で言うと、
タテ: 32.3 cm
ヨコ: 24.6 cm
厚さ: 6.6 cm
もうこれだけでフツーの大型辞典1冊分の大きさ! 「大ナントカ辞典」の1冊分でカバーしてる項目はD〜Fの間という(^∇^)
これが20冊ならんだ姿はたいへん壮観であります。
でもこのボリューム以上にスゴイのは、この英語辞典の編纂方式。「Historical Principle(歴史主義)」が採用されてること。
「歴史主義」ってナニ?というと、ある単語の用例が古い方から順に並べられてるというもの。
なので、その単語の意味や用法が「ある時期から使われるようになった」とか、「この意味で初めて使われたのはいつだ」というのを特定できるというスグレモノ。「言葉の地層」に例えられることも。
ただこれ、使う側にとっては「初めて使われたのはいつか」と調べられるのはありがたいけど、辞典を「つくる」側になるとその作業量はとんでもないことに。なにしろ「初めて使われた実例」を見つけなくてはいけない。
その「初出を特定する作業」(*だけではない)があまりに大変すぎて、その方式を提唱した人が生きてるうちには辞典編纂は完結しなかったという。
で、この「歴史主義の超大型辞典」が、
実はプログラミング用語の由来を知るためには最強のツール
という。
普段は言語学とか英文学とか、自然言語の文脈で言及される資料なだけあって、まさかプログラミング学習にも使えるとは!
例えば先ほど例に挙げたInitializeも、OEDで探すと……あったあった、ありました。コンピュータ用語としてのInitializeの用法が。
・initialization
→日本語では「初期化」
Oxford English Dictionaryによると、「磁気テープの頭出し」という、1961年の用例が
In this instance the initialization would probably correspond to rewinding a magnetic tape to its starting point.
「初期化」というより「(録音に備えて)テープの頭出しをしておく」動作が近いか
まさか「磁気テープの頭出し」が由来とはビックリ。でも “would”が使われてるから、「ではないか」という含みはあるんだけど。
そのほかにも “User Interface”で使われるような意味のInterfaceを初めて使ったのは、メディア学者のマーシャル・マクルーハンだとか、興味深いことが次々見つかる。
そんなTech用語を集めるうちに、何となくアルファベット順の辞書も作ってみたので、それもそのうち機会があればこのnoteでアップしてみようかと。
実を言うと、InitializeやInterfaceなど、サッと分かるものも多かったんですが、一番その由来を突き止めるのに苦労したのがBoolean。
True/Falseでおなじみ”Boolean”、この由来が全然わからない!
というより、どんな資料を見ても、「BooleanはGeorge Booleにちなむ」としか書いてない。
誰なの、この「ジョージ・ブーレ」って!
現代のコンピュータ・サイエンスに多大な貢献をした人のはずなのに、日本語で読めるマトモな研究書が皆無。
仕方がないので、George Boole “Laws of Thought”の原書を取り寄せて読み始めたのですが、その話はまた次回に!
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