ヤクザに不殺は難しい 実は見ていた「ROAD59 -新時代任侠特区-」感想

感想を書いたはいいものの投稿するのを忘れていたので今更ながら投稿。

ブシロードのコンテンツ(バンドリとかD4DJとかスタァライトとか)が割とすきなので、また新しく始まるIPがどんなものか見てみたくてちょうど時間が空いていたのをいいことに配信を見ました。各ユニット(組)のトップが他の.5舞台であれば座長を張れる面子ばっかりだったり京本政樹さんだったり見せ場で流れるキャラソンだったりとこのコロナ下でも衰えないブシロードマネーの威力にひれ伏さんばかりです。

意外だったのは、アルゴナビスがバンドリの流れを汲んで女人禁制男性間巨大感情フェスティバルになりそうなのでてっきり59もそうなるのかと思っていたら、実はそうでもなさそうだったことです。キャストの男女比も3:2くらいでそこそこ女性がいる上に、きちんと男女間でそれなりの関係性(not恋愛)を築いていたのでびっくりしました。静姉さんと一臣の関係性などそういうのが大好きな自分としては大変楽しかったですが、この時代においてどの層をターゲットにしているのか少々不安になったのも確かです。女性向けのコンテンツにおいては、異性間の関係性は相当慎重に構築しないと拒否反応が出ると思いますし、異性が絡むというだけでヒットしない層は男女問わずそれなりにいると思われますので。とはいえプロジェクト全体で言えばプロローグに当たるであろう本作においてクローズアップされているのは「家族の絆」であり、オタクが期待するような展開は次回からなのかなと思います。あと今回のストーリーで死亡者が出るのですが、女性ばかりなのも気になったかな。あくまで今回だけの話であって、ここからの展開で死亡者も男女比が均等になっていくのかもしれませんね。そういう時代です。


以下ネタバレ感想。一回見ただけなのでうろ覚えの箇所や細かい演出などは忘れている部分もあります。


八薙バクト(君沢ユウキ)
本来であれば6月の遙か3再演で拝んでいたはずの君沢さんを改めて拝見した今回の公演。初めて喋ったときの感想が(声低っ)だったので、やっぱり初めて見たWの印象に囚われているでござるな……と実感した次第です。とはいえ主役を張るだけあって演技も声の通りも抜群に良く、コメディシーンでもシリアスシーンでも安定感があって観ていてとても安心できる役者さんでした。

わりと華夜にばっかり着目して見ていたので、ぶっちゃけ印象が薄い。これは私の見かたの問題なので、決してバクトの存在が薄いというわけではないことを断っておきます。アーカイブなしなので見直せないからなー。次の舞台ではもう少しきちんとバクトさんに注目して見てみたいなあ。服装は春雲組に合流してからよりも前半のダボっとした服装が好きです。


華夜(河内美里)
実質今作の主人公。演じる河内さんはイリーナを演じる加藤さんと遙か6舞台で神子コンビをやっていたので、二人が会話しているシーンはニヤニヤしながら見てました。声が良く通り、立ち姿も美しくセーラー服が良く似合う100点満点の清楚JKでした。ごちそうさまです。

一応バクトも主人公には違いないのですが、制作側としては華夜を視点人物として進めているのかな、と思いました。鍵として狙われ、追われて四つの組の間を行き来する華夜に合わせて我々観客もそれぞれの組の事情を知っていくことになります。この作品が「任侠もの」をジャンルに冠しているということは、我々一般社会に生きている一般人とは違う「任侠道」という価値観のもと動いているヤクザの生き方を示すのが作品の目的であるわけで、そのためにはそれと対比する価値観が必要なわけです。価値観は他の価値と比べることで価値観たりうるものですから。そしてこの作品のヤクザの価値観とは「譲れないもののために互いに争い、暴力をもってことに当たることをも良しとする」というものでしょうか。ヤクザとしての生き方、在り方をしていないという点ではバクトも同じですが、彼は初手の喧嘩シーンで明確に強さが示されるなど暴力との親和性が根本的には高く、作中で盃を受けて春雲組に加わるのを見ても実質的にはヤクザ側であるといえるでしょう。そういう点では、ガチ一般人であるイナバさんを除けば対比対象としての「人を傷つけてはいけない」という一般人の価値観を示せるのは華夜だけなのですね。イナバさんもイナバさんで重要な役目があるのですが。

それは理解できます。理解できるうえで、割と終盤まで「なぜ争うのか、なぜ傷つけるのか」という発言ばかりなので、最後らへんは「またか……」と思いました。春雲組で守ってもらえるということになった際に、「守ってもらおうとは思いません。その代わりに、わたしに協力してください」と言っていましたが、何を協力してもらうつもりだったのか。まあこの辺りはその直後に何も聞かずに華夜を連れ出したバクトも悪いのですが。

不殺、非暴力というのは非常に難しいことで、我々一般人がそれをできているのは秩序ある社会の恩恵を受けているからです。彼女が普通の生活から突然秩序なきヤクザの世界に放り出されて混乱するのもわかりますが、それにしても主張するのが最後まで一貫して「何故争うのか」なのはどうなんだろう…という気が。それで様々な相手に争う理由、戦う理由を示されるわけですが、それを聞いたうえでもなお非暴力について説けるほどの芯となる思想があるわけでもなく。賢誠が「お前のせいでこの街は争っている」となじるのはぶっちゃけ詭弁に過ぎないのですが、敵だらけの世界でのし上がって来た男の論理に一般社会で育まれた女子高生の倫理観で対抗できるかといわれたら出来ないと思うので、キング牧師でもない普通の女子高生には酷なことだろうなとは思います。公式サイトによると「真面目で控えめな少女」とのことなのですが、割といろんな相手に思いっきり言い返すので「控えめ…とは…?」となりました。まあ個性の強すぎるヤクザたち相手に言い返せないようではやっていけないと思うのでこっちのほうが私としては好きです。

あと非暴力主義の割に自分も日本刀を持っているのは専守防衛目的としていいとしても、最終的に解決する手段がオロチの首による謎パワージンギなのもこの作品の行く末を暗示しているようでもぞもぞしました。どれだけ平和主義を説いても結局暴力に行きつくのか。ヤクザたちは平和な世界に生きてきた華夜にヤクザの価値観から理不尽を強いるわけですが、それに対して一般社会の論理を説くのも価値観の押し付けという点では変わらないわけで。とはいえそういう譲れない信念のぶつかり合いというのも見せ場のひとつではありますし、その上で最終的な彼女の結論が「春雲組と行動を共にし、ヤクザである父のことを知っていく」なのは今まで平和な価値観しかしらなかった彼女の終わり方として非常に納得がいくものだと思いました。その「知る」が「彼女の価値観から判断して許せるものなのか知る」なのか「知ったうえで価値観を変えていく」なのかでこの先の作品の在り方が変わる気がしますね。

最後のバクトとの会話で「友達といるときは話しかけないで」というのは年ごろの女子高生らしくて大変可愛らしかったですし、ボディーガードオッサン(たぶん)ヤクザとセーラー服JKの組み合わせはいつ見ても良いものですね(BLACKLAGOON)。それにしても華夜ちゃんに友達がいないというのはバクトと一緒に「だろうな~」と思ってしまった。あの年であの融通の利かなさは致命的だろうなと思います。

というか書いてて気が付いたのですが、もしかしてこの話、華夜が極道の女として覚醒する方向に進んだりするんだろうか。


春雲組のみなさん

誓吾を演じる前ちゃんのビジュアルが好みすぎる上に声優らしく声もはっきり通って演技も上手かったのでこの作品で1,2を争う好きなキャラになりました。舞台に立ってるだけで幸せ。どうでもいいのですが誓吾のビジュアルが発表されたツイートの引用RTに響箱推し海外ネキの「MAE-CHAN!?!?!?!?」という反応がめちゃくちゃたくさんあったので響ってすげーと思いました。

京本政樹さんはすごいですね。なんでもないセリフをしゃべってるだけで重みがある。ああいった役者さんが一人いると舞台全体が締まるだろうなと思います。

最終的に華夜ちゃんは春雲組と一緒にいることを選択するのですが、なんだかんだいって狛狼組と一緒でもなんとかなりそう。静姉さんは一臣さんとの会話を見るになかなか情が深そうですし、ショウも悪い扱いはしないと思います。まあそのあたりはボタンの掛け違いですし、やっぱり血縁は大事だからね。春雲組のみなさんが一生懸命渾身のギャグを披露するところはほほえましかったですし、各々のジンギを駆使してことに当たるのはやっぱりワクワクします。こういった特殊能力の描写はアニメだと映えるだろうなと思うのですが、群像劇をアニメで上手くやるのってかなり難しいと思うので、選択肢制のビジュアルノベルがいい落としどころかな。

春雲組がいくらフレンドリーで仲間を大事にする組とは言ってもヤクザであることには変わりはないわけですし、仲間を大事にするというのは「それ以外は大事にしない」という線引きをしているということでもあるわけです。事実家族を大事にしている狛狼組のシオンは家族以外の人物であればカタギ相手でも冷酷であるということが示されていますし。そういった側面と華夜がどう向き合っていくかは今後の課題かなと思いました。あとバクトの親父さんの身柄か娘の情報か、といった場面でいくら仲間を大事にするからとはいえやすやすと本当の情報を渡したうえで親父さんも殺されてしまうの、腐ってもヤクザなんだから偽情報掴ませて親父さんの身柄も娘も両方守るくらいのうまい立ち回りをしてほしいなと思いました。そうできなかった事情があるのかもしれませんが。


狛狼組のみなさん

静姉さんはもうあいあいが演じてるというだけで10割増しの評価をしてしまうのですが、あいあいの関西弁いいよいいよーーー!!!最高だよー!!立ち姿も美しいよーー!!最高でした。イラストビジュアルで持ってる傘を持ってほしい。

てっきり一臣さんはショウさんとクソデカ感情のやりとりをすると思っていたので、まさかのそっち???とびっくりしました。皇にジンギがないけど一臣さんがジンギを使うということは、狛狼組にいたときにジンギの盃を受けたわけで、さすがに涼香から盃を受けるということはないだろうから除外、ショウもありえるけど一臣さんがいたころは年齢的に組長代行やってなさそうだから除外、となると一臣さんがジンギを受けたのは…となると妄想がはかどりますね。まあ今のところ組長(未登場)が一番有力な候補ですが。

涼香ちゃんはもう愛さずにはいられない妹ですね。カワイイ。あれだけしたたかで機転もきく賢い子が兄と姉の苦悩を察していないわけがないので、普段どんな気持ちで明るく振舞っているのだろう……と思うと尊みの極み。GPSがついてるクマちゃんはお兄ちゃんからもらったと言っていましたが、まさか自分でGPS付けるはずもない(多分)のでGPS付いたクマをあげるお兄ちゃん……というのもいいですしそれを受け入れる妹……もいい。まあヤクザの娘だから防犯目的で大事だからそんなに変なことでもないと思うけどね。美波わかなさん可愛いなあ!!

あとショウが「涼香はオレから離れんなよ」と言っていたの、あれほどジンギで人間離れした力を持っていてもやっぱり妹としてきちんと扱っているのにキュンとしました。兄妹尊い。

それにしてもシオンくんというか七海ひろきさん、とにかく舞台映えがヤバいですね。アンミナのイベントで男性陣に混ざって立っていた時も一人だけ涼風が吹くかのような立ち姿でしたが、キャラの衣装を纏って舞台に立っていると一人だけ作画が違いすぎてビビりました。演技も上手いし飄々とした関西弁もかっこいいし心配ショウくんとのやりとりもカワイイ。

シオンくんがなぜバクトを「面白い」と評価したのか考えてみたのですが、明らかに暴力に慣れているのにヤクザを拒否していたからかな。ショウもヤクザの組長代行をしているのにヤクザ的価値観にあまり親和性がなさそうなので、そのあたりの気が合うと思ったのかも。静姉さんはショウを支えるのではなく奮い立たせようとしていますし、涼香ちゃんを巻き込もうとはショウも思っていなさそうなので、ショウと似たような価値観のバクトであればショウの支えになってくれると思ったからかもしれません。だからスカウトしようとしたのかな。そしてショウは自分が支えればいいのにわざわざバクトをスカウトした理由は……自分の身体が……シオンくん死なないで……

総合的に見ると一臣さんも含めて一番好きです、狛狼組。


黒条組のみなさん

ROAD59で一番ぼっちなのだーれだ???皇賢誠!!

春雲組、狛狼組は言わずもがな、ベネディクトもなんだかんだいってアンソニーくんに「一生ついていきます!!!」と言われてるくらいなので人望はあるわけですが、マジで賢誠は賢誠のことを一番に思っている人が作中一人もいないのが可哀相だな……と思いました。まあ賢誠のせいなのですが。

蓮花があれだけ捨て身の裏切りにでたのは彩愛のためで、その彩愛も賢誠か蓮花(死)か?を選ばせたら蓮花を選んでしまった。というかそもそもあるはずのないジンギをエサに蓮花を殺させようとしたのは、彩愛がそれをしないとわかってたからなのでは?と考えると、あれほど忠誠を捧げていた彩愛を切り捨てたのは彼女にとっての一番が賢誠ではなく蓮花であるとわかってたからなのかなと思いました。一臣は裏切り者だし、他の組のジンギを受けた人間なんて絶対に信用しないだろうし。まあ実際一臣も狛狼組に情が残ってるし……

というか賢誠にジンギがないなら柊姉妹のジンギは誰から受けたんだろうか。彩愛が賢誠のジンギを欲しがるなら持っていなかったのか?でも華夜との戦闘シーンで思いっきりジンギを使わない華夜を煽っていたからには持っているだろうし。もしかしてジンギを持っていたのは蓮花だけで、彩愛は持っていなかったのか?そうなってくるとますます深みを増してくる柊姉妹。ジンギがあるところにさらにジンギを受けると強化されるとかそういう設定があるのかもしれませんが。

賢誠は予知能力があると見せかけておいてドローンで街を見張っていたり、それを誰にも明かしていなかったりととにかく疑り深くだれも信用できない人なわけで、こうして書くとどこがええねんみたいな人を魅力的に見せられるのはやっぱり井上正大パワーすげえな……としみじみしました。あまりにもハマりすぎていてたまに変な笑いが出てくるレベル。こうした手段を選ばない部分や悪趣味な部分を抗えない魅力として説得力を持たせるのはやっぱり役者さんの力ですね。誰も信用できない状況でさえも利用し飲み込んでいこうと企てるパワー。語り口は柔らかで大声を上げないのにどこか逆らえないオーラは、確かに彩愛が心酔してしまうのもわかる。

役者さんと言えば柊姉妹はあの着こなすのが死ぬほど難しそうな衣装がバッチリ映えていてクラクラしました。岡田さんはD4DJであの素晴らしきくびれを拝んでいましたが、くどはるさんの脚のラインもまあ素晴らしいこと。舞台に立ってるだけでも幸せ(二回目)。一臣さんもオールバック!黒髪!革靴!手袋!と性癖のオンパレードです。静姉さんとのツーショットが幸せすぎるんじゃ……


フェニックスのみなさん

蒼井翔太氏、声優としての演技の時はそうでもないのに、顔出しで演技をされるときはなんというかこう、いいようのない迫力があるのはなんなんでしょうか。ベネディクトさんはヤバい見た目にヤバい口調でヤバいシーンをバックにビデオ出演という一つバランスが崩れたら一気に違和感バリバリなご登場だったわけですが、蒼井翔太氏はすべてをヤバいオーラに変換していてさすがだと思いました。

アンソニーくんは仕事に対する姿勢だけで言えば我々一般人に一番近くて親近感が湧きますね。上司と部下に振り回され、情とか家族とか仲間ではなくただ自分が生きるために仕事をする、ただそれが戦うということに繋がっちゃうだけで。この時代、仕事を選ばなければ転職先などいくらでも見つかるとは思うのですが、多分一般企業に就職してもアンソニー君は生きていけないんだろうな。根本の倫理観を戦場で育んでしまうと、一般的な環境に適応するのは難しいものです。なんだかんだ言って紅茶を飲みながら戦場を闊歩するベネディクトとの相性は抜群だろうし、これからもベネディクトにいいように転がされながらしぶとく生き残っていくんだろうと思いました。結構好きです。

イリーナの夢は「みんなを幸せにしたい」なので絶対に一人で進めることは出来ず、他人との協力が不可欠なのですが、そのために取る手段が「殺人」なのがひどくアンバランスで心にきました。イリーナがそうなってしまうのは、彼女がそれしか知らないからですね。他人との連帯をイリーナは出世して部下を増やすことによって補おうと思っていたのかもしれませんが、それをしたら敵が増えてますます夢から遠ざかるんだよ……と言ってあげたい。最期はちょっと強引だったかな。歯車が噛み合えばもっと活躍できたと思うだけに、この時点で退場になってしまったのが非常に残念だと思いました。

フェニックスのみなさんはどこかちぐはぐというか、アンバランスな部分が強調されているのが面白いなと思います。



なんだかんだ書くことがいっぱいあったのでかなり楽しんで見たんだなあと思います。4月に舞台第二弾、はたまたコミカライズとどんどん展開されるらしいので、多分コミカライズも読むし4月の舞台も配信があったら見るんだろうな。それにしても書いたのを読み返してみてあまりにも男性と女性で文章量が違うのでやはり自分、どんなに男性が多くても女性にフォーカスして見てしまうんだな……と感じ反省しました。次はもっとバクトさんのこととか春雲組のみなさんの関係性とかをちゃんと見たい。今後の展開に大いに期待です。



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