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2-2 夢の中

2-2 夢の中

B店は本当に平和な店だった
平和というのは
A店に比べると罵声なんて一切飛び交わない
笑い声の方が多いお店だったからだ

B店は
【幹部】
店長のY石さん
ナンバー2のM瀬さん

【大入り】
自分
元キャバクラ店長A石さん

【研修】
現役お笑い芸人のT島さん
すごく不器用なT内さん
遅番が来るとデザイン作業で離れるK室くん

の6人体制だった

B店はフロアが1階と2階で分かれていて
時間帯人数が10人超えると2階を使う

月曜日〜金曜日の夕方までは殆ど1階で営業
金曜日の夜〜土日は1階と2階を使う流れが鉄板だった

📍サロは店内のBGMはユーロビートが流れているイメージを持ってる方も多いと思うが
流行りのJPOP、KPOPなどキャッシャーの人間の好みで色々流れる

時代的に言うと
AKB48黄金期で、待機チップにはAKBの女の子と数字が書いてあったり、BGMにもよくAKBが流れていた

当時は忙しくなると【トランス】【ユーロビート】を流すキャッシャーが殆どで人によって曲(アルバム)が決まっている傾向があった。ある曲が流れると「あ!○○さんがキャッシャー入ったんだ」なんてキャストの女の子達が話してるのをよく聞いたもんだ

B店は今ではもう殆ど見かけない
※①【花びら回転(3回転)】をメインにスタートした店で、お店の看板のプライスのメインには3回転の料金がメインで記載がある
※①3回転とは女の子が15分、15分、15分で
入れ替わる合計45分で女の子3人と遊べるコース
実際需要が多いのは女の子1人の30分コースではあるが、A店では回転コースというのが無かったので最初は理解するのが大変だった。

A店とB店との大きな違いは店舗構造の違いから生まれたキャストとの物理的距離だと思う

A店はとても大きいお店で女の子の待機とホールやレジと物理的距離があって女の子と接する機会は少なかったが
B店は狭すぎて嫌でも接さないといけない環境だった、なんか家の中みたいな雰囲気だった。


レジの横にお客さんから見えない位置にキャスト待機があるので女の子達はお客さんの受付風景が見えたり聞こえたりしていた

常連さんにはあだ名を付けてるのもB店の特徴だった

📍サロの常連さんって殆どが特定の女の子を指名するイメージだがB店には【絶対に3回転コースのフリー】で週に3回は来店する常連さんが二人いた。
50代の方をミスター、30代の方をミスター2
と名付けていて、二人のどちらかが来たらKPOPアイドルKARAのミスターを流していた

ミスターが流れると待機にいる女の子達は「あ!ミスター来たんだ!」と誰かが言うのが日常だった

異動して初めてB店に出勤した日だったか
3回転コースというのを知って間もないタイミングで
店長のY石さんが突然レジを離れて

「Kくん、あとはよろしくー🖐」

と言ってご飯を食べに行ってしまった

「え?💦 すみません💦俺3回転コースの回し方わからないんですけど💦」

と言ったら

Y石さんは「大丈夫大丈夫😉」と言って去ってしまった

俺の感覚では
キャッシャーは📍サロの花形ポディション

戦力外通告を受けてやってきた俺に
そこを躊躇無く任せてくれたY石さん

3回転コースがわからない絶望感よりも
キャッシャーを任された嬉しさの方が大きく勝っていたのを今でもすごく覚えている

A店では途中からキャッシャーには入れてもらえず後輩のN沢くんばかり入れてもらってから本当に久しぶりだった

久しぶりでミスも多かったと思うけどキャッシャーをできるようになりたかったから

本当に嬉しかった

この時の経験は

後に自分が後輩を育てる上でバックボーンになっている気がする

当時のA店では最初誰もが躓く「キャッシャー」業務然り何かミスをすると徹底的に叩かれた
それに耐えられず辞めていった人間も多かったはずだ

B店ではそんな光景を一度も見たことがなかった

見る人によっては

緊張感が無い、お遊びごっこのように見えたかもれない。

それでも俺には
続ける事こそが重要だとも思う

誰かにお前は才能がない能力がないと言われて
辞める結末より
続けてみて、意外にできないと思ってたこともできたな、の方が実際多いし正しいと思う

現実の世界ではできる人間だけが称賛される世界かもしれない

でも
薄暗い📍サロ店の狭い世界の中でくらい

能力が低くても才能が無くても
少しは評価されて
胸を張って頑張ることができてもいいじゃないか

今振り返ると
B店での日々は
いつか覚める夢の中にいたみたいだったが

毎日夢中になれる
次の日が楽しみな気持ちで眠りに付ける日々を
確かに手に入れた気がしていた





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