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介護施設でのお誕生日会

 グループホームでは、居室担当という、各スタッフが特に注意して面倒をみる入居者さんを振り分けている。
僕の場合、Cさんという要介護5の方だ。元スーパーマーケットの経営者さんである。矍鑠としていた時は聖書を片手に施設内を飛び回っていたくらいアクティブな女性である。
そのCさんが88歳の誕生日を迎えることになり、その誕生会の企画をすることとなった。
 正直全く興味がわかない、ただ、決まった時間、介護で入居ささんの面倒をみるのが仕事で、その時間以外に自分の時間を使って、誕生会の準備をするなんて、とどうしても、どうしてもそんな考えが頭をもたげてくる。

これは非常に行けない思考だ。僕が立てた企画は、まずくす玉をセット、割ると中から、Cさんの名前とおめでとうの文字が。で、事前に購入したバースデーケーキ的な簡単なおやつを準備。ハッピーバースデーの歌を全員で歌い、写真撮影。
誕生日カードを作る。その誕生会でCさんへの激励メッセージをスタッフから書いてもらうためのシール準備。一週間前から100均なんかで必要なものを買って準備した。自分の人生でこんなことやったことないし、老人に誕生日を祝うレクリエーションを考えるなんて、、、想像もしてなかった。

 さて、その当日は前日の夜勤から始まる。夜勤明け、退勤時間から残業で1時間ほど残って、早番のスタッフに手伝ってもらいながら進行する。
 「ハッピーバースデーツーユー!!」の掛け声の歌を自分が大きい声で始める。
一緒になって他のお婆さんたちも歌う。ちょっと幼稚園の先生になった気分。
入居者さんの中で一番年長の98歳のおばあさんから一言お祝いのコメントをいただく。
 「ああ、88歳なの?まだまだね、アタシは98歳だからあと10年は頑張ってね」とか、
 「ほんと、体に気をつけて過ごしてね」
とか、認知症患者とは思えないコメントだ。日常のどこかのスイッチがショートしている時と噛み合っている時があるんだな、医療的な専門はないのでよくわからないが、、、とても新鮮な感覚だ。手渡したバースデーカードを手に笑顔のCさんを撮影して、お誕生会企画レク終了であったのだ。

 自分には向いていない、好きでもない、そんな仕事でもやってみるとなかなか気づかされることも多いものだな。今日も夜勤でキツい勤務だけど、頑張ろうかな、もう1日だけ、自殺だけはやめよう。。みんな悲しむから。


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