【250字レビュー】世界の終わりとハードボイルドワンダーランド

20年ぶり再読。「私」の中の閉じた完全な街に「僕」がいる。「私」は現実の危険にさらされた後、肉体的死の宣告を受ける。この不条理に「私」は怒るが、どこか冷めている。すでにあらゆるものを失っているからか。彼の失ったものは「僕」の街の幻想的な獣の頭骨の中にある。これを「僕」が取り出す。つまり「僕」は冷めていく「私」の中で記憶を呼び起こそうとしている。けれど最終的に、「僕」と「私」は分裂したように思える。そうすると「僕」の「影」は「私」なのか。「僕」は博士の言う「思念」として「世界の終わり」の森に永遠に留まる。

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