【250字レビュー】猫を棄てる 父親について語るとき

歴史の意味は歴史を「引き受ける」ことにある。戦中世代の父親と戦後世代の彼、加えて性格的な強固さで上手く関係できなかったとしても村上春樹は父を引き受けようとして生きている。小説家とは、(それがどのような人間であれ)身近な人間を心の繋がりとして引き受け、そこに写る像や自分の心の動きを観察し、言葉にする存在という感じがする。また、たとえその人間とうまく関係できなくても、人間はそれぞれの形で引き受けることはできるのだと感じる。むしろ徹底的に引き受ける道の模索や葛藤が、小説家の営みなのかもしれない。

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