【250字レビュー】風の歌を聴け

二十数年ぶりに再読。主人公は内側を覗き込むのではなく、周囲の人間や架空の物語に自分を投影する。自分の形を少しずつ感じ取ろうとする。内部の衝動と周囲のバランスをとりながら、慎重にはみ出さないようにバランスを取るような文章。セリフや展開は軽快で「これ以上は語らない」という線を保つ。気取りにも感じるけど、これが村上春樹の形なのだと感じる。内面臭さから離れたところで、自分の内面を確認する営みというか、湿ったところに向かわないための固い枠のなかでもがくという感じか。今改めて読むと、主人公の怯えのようなものも感じる。

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