【試着の旅】私を表現する香水探し➀
鼻が利かない。
そのことに気づいたのは相方と話をしていた時のことだ。
「○○のような匂いがする」と相方に言われてもピンと来ない。そんなことが何度か続いて「どうやら匂いが分からないな?」と思い至る。
そうして振り返ってみると、香り(匂い)に興味を持ったことがないことに気づいたのだ。
自問自答ファッション講座で「好きな香りは?」とあきやさんに聞かれても答えられず、なんとか捻り出したのは香水の名前ではなく「あるシャンプーの香り」「ある食べ物・飲み物の香り」だった。
あきやさんからのお題(#教えて自問自答ガールズ)にも「私は、これ!」という答えができなかった。
香水探しの旅の「入口」に立つ
あきやさんからいただいたレポートで文字として突き付けられたときに、香りに対する解像度の低さに愕然とし、目を逸らした。
バッグや靴といった制服化の軸になるアイテム探しを優先させていたこともあって香水探しの旅に出ようと思うことはなかったのだが、ガールズたちの香水の話がひとつも分からないことには疎外感のようなものさえ持ち始めていた。
そこで「知らないのなら(知らないことで気後れするのなら)知ればいい」と奮起して新宿伊勢丹でフレグランスコンサルティングを受けることにした。
カウンセリングが始まってすぐ、香水を全く知らないことを伝えたら「では、お好きな香りの傾向探しから始めましょう」とジャンルごとの香りを代表的な商品でいくつも試させてもらうことになった。
試すのに使ったムエット(試香紙)を右から好きな順に並べていき、店員さんの解説を聞いていくと、何となく好きな香りの傾向が見えてきた。
そんな私の変化を見ていたのか店員さんに「次は、好きな香りではなく、どんな香りを纏いたいか考えながら並べ直してみてください」と言われて戸惑った。
香水で「なりたい」を表現するために好きな順からなりたい順に並べ替えるということだと分かったけれど、香りと「なりたい」のイメージが一致せず手が動かない。
それは甘い香りが「フワフワ、柔らかい」だろうな、程度の漠然としたとイメージしか思い浮かべられなかったからだ。
迷っていると「職場で使いたいとのお話でしたが、どんな風に見られたいですか?」と問いかけられた。
「キリッとした頼れる感じ」「困ったときに相談される感じ」と伝えると「では、このような香りはどうでしょうか」とひとつのボトルを目の前に置いた。
ムエットを手渡され香りのイメージなどについて説明を受けたけれど、正直に言えば「これが私のなりたい香り??」と頭にはてなマークが浮かび、全く聞こえていなかった。
次に浮かんだのは「そういうものなのか」という感想だった。
何が「そういうもの」かの説明はうまくできない。
ただ、そうやって香りから何らかのイメージができる(与えることができる)のだと知った。
これまで自分が何をどう感じているか表現することを意識してこなかったため店員さんに感想を伝えることができず、香りからイメージするものもよく分からなかった。
けれど、香水は洋服などと同様に「好き」だけでなく「なりたい」で選ぶことができるのだと知ることができ、よい経験となった。
私たちの妥協点
帰宅したら相方に、腕に着けてもらった香りを嗅いでもらおうと思った。
どんな顔をするかワクワクしながら玄関を開けた。
相方の第一声は「鼻が痛い」だった。
相方は一般的な人より鼻が利くことを自認しており、私が香水を付けることには当初から反対していた。
相方曰く、私の鼻が利かないこともあり、例えば香水を付け過ぎていても分からないだろうから周りに迷惑をかけるのではないか、ということだった。
実際に、このとき腕に付けてもらった香りは帰宅した時点で全く感じられなかった。
それはその香りに慣れたからだと思っていたし、相方が香りに気づいたのはそれまでなかった香りが入ってきたせいだと思って反論したが、そうではない、と一刀両断された。
香水を纏いたい私と、纏わせたくない相方。
匂いが分からない私と、感じすぎる相方。
お互いの希望が噛み合わず、話し合った結果見つけた妥協点は香水ではなく、お互いの好みに合う衣料用スプレー(ファブリックミスト)となった。
私にとっての香水とは
この経験から、香水(香り)に対する憧れのようなものが生まれた。
香りがよく分からない。
だからこそ憧れる。
そして(香水探しの)旅の入口に立ったからこそ分かったこともある。
私の香水探しの旅はここで一度、幕を下ろした。
しかし、香水への憧れが再び高まる出来事が起こる。
それはまた次回のお話。
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