日記 #3

23.6.25.

 昨日寝たのが早すぎたのか、朝四時くらいに起きてしまった。こうも始まりが早いと、どれだけ活動しても一日が進まない感じがある。

 そぞろにkindleの商品を眺めていたら、B.ヴィアン『墓に唾をかけろ』が300円ほどで売られているのを発見した。どうやら早川書房のセールらしいが、あまりに良心的な値段に驚きを禁じ得ない。T.モリスン『ジャズ』、A.エルノー『嫉妬/事件』と併せて購入する。最近留学に向けて全面的な電子書籍化を推し進めている。
 もともと家においてあったフロム(たぶん父親のもの)とエルノーを交互に読み、短編の『嫉妬』は読み終えたが、これ、非常に面白かった。読みやすい上に長すぎないのがちょうど良い。

私はただ、私を居場所としたあの嫉妬なるものに固有の想像世界と特徴的な行動を描くことに努め、そうすることで個体的なものとプライベートなものを、私が執筆している今この時にはまだ観念的な存在でしかない見知らぬ人びとがいつか自らの現実として受け止めることもあり得るような、感覚的で、かつ知的に理解できる実体に変えようとしているだけだ。人がこれらのページに見出すことができるもの、それはもはや私の欲望、私の嫉妬ではなく、誰のものでもない具体的な欲望、誰のものでもない具体的な嫉妬なのである。そして、書いている私は、人に見られることのない次元にいる。

アニー・エルノー『嫉妬』 堀茂樹訳

 ちょうどバイト先に向かう電車で『嫉妬』を読み終えたので、半ばぼうっと言葉の物体性について考えながら皿を洗っていたら、店長に怒られた。このバイト先は強い言葉がやたらと飛び交う。僕はそれに怯えている。それでも上司の人間味の部分と、あとまかないのおいしさに釣られてなんとか研修を続けてはいるのだが、そろそろやめるつもりでいる。今日は四時間ノンストップで皿洗い、それも全身の力で擦る必要のある特殊なものをさせられ、腰はバキバキになり、手の皮はめくれ、まさに満身創痍の状態で帰途についた。これで4000円強。小学生のオンライン家庭教師一時間半と同じ値段である。肉体労働には特有の快楽があるが、パワハラは御免だし、最低限で良いから休憩も欲しい。電車で爆睡なんて久々だ。

 それでも帰ってから日記をつけている自分が偉い。明日更新すれば三日坊主は脱せたことになる。


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