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留学日記#31 24.1.13.

 日記の特性についてしばしば考える。それは誰にも見せないものだと思う。たとえ見つけられることを期待していたとしても。だからブログは日記ではありえない。それでもこの日記がそう銘打たれていることには、きっと意味がある。僕はとにかく書かなくてはならない。文体がどこまでも浮ついていくとしても、その宙吊りが確定されるのは書きながらでしかあり得ない。日付に権利を委ねて、書くことを義務とすること。動機を外注すること。それが日記のもう一つの機能である。

 だから、本当は今日の日記は今日のことを書くはずのものだけど、この日記では、空白期間について平然と振り返ったりもする。

 12月は中ごろまで日本人とつるんでいた。クリスマスが近づくにつれて皆旅行に行き始めて一人の時間が増えていった。僕は一泊二日でスイス・バーゼルに行きクリスマスマーケットを観光したが、あとはずっと寮にこもっていた。ヨーロッパ人たちもこぞって帰省していたので、年明け前後の寮はほとんどもぬけの殻だった。VPNの設定がようやくうまくいったこともあり、その間はよく映画を見ていた。ヒッチコック「サイコ」、エリックロメール「レネットとミラベル」、アキ・カウリスマキ「マッチ工場の少女」他三週間で二十作ほど。ロメールに惚れ直した。

 レマン湖湖畔で盛大な花火を囲った年明けに前後して、日本人の友達が三人訪ねに来てくれた。日本からと、フランスからと、デンマークから。異邦での再会は感傷的にさせる。帰り際になると無性に寂しくて、柄にもなくハグさせてもらった。もれなく三人とも。

 ここには書けないほどに大きな事件もあった。まだ解決していない。そのせいでここのところ鬱々としており、おそらく今後も情緒不安定な状態が続く。年末年始はほとんど部屋で寝た切りだったが、友人らが暖かく支えてくれているおかげで何とか日常生活を送れるようになった。本当にありがたいことだし、そんな友人らのことを大切にしていかなければならない。

 この一か月半はおおよそこんな具合で、今日について言えば三人目の客、デンマークの友人が先ほどジュネーブを発ったところだ。このタイミングで筆を執り直したのも、彼を含む友人に「日記読んでるよ」と言われたことがきっかけだった。

 年末年始の孤立期間と留学前からの友達の案内とで、寮の日本人グループとつるむ機会が徐々に減ってきていて、最近は代わりにDELF(フランス語資格試験)の対策に着手し始めている。本当は就活もしなければならないのだが。明日から始める。

 以下ギャラリー。

ジュネーヴ・レマン湖湖畔のクリスマスマーケット
比較的こじんまり
バーゼルのクリスマスマーケット
派手で活気もあり、楽しい
年越しの花火
日本の友人と見たゴダール「スイスの兵隊」
ジュネーブが舞台 鑑賞後レマン湖で聖地巡礼
ここのところ凍える寒さ
ジュネーブの世界遺産:コルビュジェの集合住宅と僕

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