#13 バゲット女(うえまき)
夜の街を歩く女、バゲットを握りしめていた。
前髪がぺっとりしていて、3日くらい風呂に入っていない感じだった。くちびるが震えていた。
「っと、ともちゃんが、だだだいじょうぶってゆってたし、しげちゃん、っも、だいじょうぶってゆうし、おさないさんにかんしてはぜっ、たいにだいじょうぶだからってゆってたし、から、までついてた、だから、あたしはだーいじょうぶ」
女は帰納法を使って自分を励ましていた。
たまに、握っているバゲットを振り回していた。夜の空気をバゲットで斬る。
不織布マスクは女の涙を吸い取った。
女はそれに気がついているかどうか。
女、ひとりじゃないのに震えている。気の済むまで歩いてゆく。
女、さっきの私。
うえまき
つらいんですけど!!!!!!!ねぇ!!!
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