あいまいにかさなる

2020年という新しい年がくる前に、学生時代に4年間働いたスナックが閉店した。辞めてから8年経つが、夜出かけたついでに顔を出したり、常連さんが声をかけてくれてお呼ばれしたり、ほんとたまにだけれど、数少ないいつでも迎えてくれる場所だった。

場所が失われると、そこにあった人々の関係がやたらとふんわりする。

そう感じた。

2020年になり、新年会するわよ!とスナックのママの呼びかけで、働いていた歴代の女の子と常連さん合わせて15人程が集まった。もう会えないと思っていた人、噂には聞いていたけれどはじめて会った人もいた。焼肉を食べ、あの頃は…と思い出に浸り、誰かの冗談に笑い、みんなが笑顔だった。

焼肉のお店を出て、次の店へ。20代〜70代の男女がふわふわと夜道を歩く。ふと、なんだか不思議な気持ちになる。普段こんなに親密になることのない年代が肩を並べて歩いていること。それぞれの人生が交差していたのはあのスナックの中だけだったはずなのに、その場所はもう無くて、私たちはいまふわふわと、思い出だけで繋がっている。

いまのところは。


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〔いつかの海の、知らない人たちを写した写真を思い出した〕


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