石を積む

蜘蛛が運んできた 
一通の手紙には
夏の欠片と貴方の横顔

蝉の声が 頭の中でジンジンする
畳の擦れる音が聞こえる

川を渡ればあちらとこちら
暗がりの鼓動を
蝉と畳が かき消したあの日
小さな石を積んでも
これはファンタジーじゃないんだよと
産科医が静かにつぶやく声

入道雲とタクシー待ちの貴方と私
風が生ぬるくてほっとした
帰り路 言葉少なに
風が何かを運んでくれるのを
待っていた

石を積んで 石を積んで
手を合わせた空は
あの日の入道雲

畳の擦れる音が
聞こえた気がした夜に
貴方はそっとつぶやく

あの日の事はファンタジーじゃないんだよ

蝉は鳴き 夏が来る頃
僕は静かに手を合わせ
そして今日も石を積む

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