京都

三条小橋の交差点 高瀬川の前で
煙草を吸いながら 
来るはずのない 君を待っていた
時計の針が逆回りを始めたので
僕の血液も 逆流をし始めて
逆立ちしたピエロが
笑いながら泣いていた
 
季節外れの線香花火が 水面に揺れて
粉雪舞う街に 飛ぶ蛍は
鏡文字の約束を 今も忘れないでと
モールス信号を送っていた
 
しゃれこうべは 等間隔に並び
気づかぬうちに 死に至る病に侵された
ああ 明日も知れぬ我が身かな
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
 
教授の秘密の研究は 真夜中の扉の奥
フラスコの中で 生れては消えていく
愛と再生の物語
累々と積まれた屍は
今日もサクラサク 春の日の夢を見る
 
精神科の診察室 お囃子が流れる窓の外
鉾は根元からぽきりと折れて
胎児の血が降る宵々山
月は東に 日は西に
そう 死ぬ事はいつも隣り合わせ
 
出町柳の三角州で書いた
誤字だらけのラブレターを
今更ながらに ピエロに託すことにしたよ
泣きながら笑っていた君に
届く日がくるだろうか
 
生きて生きて生きて生きて生き

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