思い出山公園

思い出山公園には
真ん中にブランコがあって
スーツを着たサラリーマンが
仕事帰りに揺られて帰る

夕焼けが綺麗な日には
サラリーマンはよく泣いていたりするので
私も時にもらい泣きをしたりする

またある日などは
帰り路を見失った老人が
公園に迷い込んでは
野良犬の頭を撫でていたりする

誰もが救われない掛け替えのない存在で
その希薄さに地球が耐えかねて
今日も悲鳴をあげている

そう サラリーマンも 老人も
希薄で でも掛け替えのない存在で
誰も代わりなど勤められない

受け止めてくれるのは
思い出だけかもしれないと
みんなの思い出が置き忘れられた
この公園は いつしか
思い出山公園と呼ばれるようになった

ほらあの日の友達の笑い声も
勇ましい自分の背中も
幻なんかじゃない
生きてる足音は今日も公園に記憶される

今日も思い出山公園には
少しの事情を抱えた人が集まっている
そうやって世界は美しく回っている


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