黄色い馬

黄色い馬が走る
焼け焦げたアスファルトの上
雑踏の中を 音も立てず

黄色い馬が走る
高くそびえ立つ ビルヂングを縫って
たてがみを靡かせながら

交差点を行き交う
車列は 気怠い夏の日の午後
行き先を見失った
屍の列 

そう 累々と積まれた屍の山
今日と変わらぬ 陽射し照る夏の日
屍 屍 屍 屍

銃口の剣先は狂気を刻み続ける
捕虜達の最期の声は
母の元に届いただろうか

黄色い馬よ 伝えておくれ
私は こんなにも呑気に生きていた
そう その瞬間が来るまでは
今の誰とも変わらぬ位の
無知と 傲慢さで

空が青かった
後ろ手に掛けられた手縄にも
汗の滲む日の事だった

オカアサン
ボクガ イナクナッテモ
カナシマナイデ クダサイ

黄色い馬は嘶く
今日この瞬間を生きる我らに

声にならぬ声を
伝える為だけに






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