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葉の茶の話

葉の茶が好きだ。

味が好き、見た目も好き、存在が好き。
そんなこんなで買いまくっていたら、5点ラジオに葉の茶会があると思われるくらいには布教していた気がする。

葉の茶に出会ったのは、休職中に通っていた心療内科に向かうバスの広告で見たことがきっかけだった。毎週、同じ時間に同じバスの同じ席に座る。サブリミナル的に葉の茶を刷り込まれていた。

「あ〜なんかこのお茶美味しそうだな」
それくらいの感覚で、見かけたら買おうかな位にぼんやりと思っていた。

ところがどっこいだ。
全然出会えない。探せど探せど葉の茶に出会えない。なんなんだあのお茶は…と、日に日に葉の茶に思いを馳せる時間が長くなっていった。休職中はとにかく暇だったのもあるが。

ある日私は思い立って、葉の茶を探すためだけに散歩に出かけた。
暇つぶしになればいいか、位の気持ちで。その気になればすぐ見つかるだろう、位の気持ちで。

普段は目もくれないで歩いていた駅前の自販機、公園の自販機、駐車場の自販機、いろんなところを探したのに、葉の茶はない。
探してるときは出会えないとはこの事か…と焦燥感に駆られながら、梅雨明けのよく晴れた空の下を1時間半歩き回った。

休職中の怠けきった身体は限界を迎え、諦めて家に帰ろうとしたときに、なんと家の真裏の自販機に葉の茶を見つけた。
こんなとこにあったんかい。

大人になってから、ここまで必死に探したことはあっただろうか?
ありものでなんとなく誤魔化してきたわたしには、葉の茶に出会えたことで気付かされたことがたくさんあった。

休職してからすっかり食欲も物欲を消え失せ、ただ惰性で生きていた毎日だった。
そんなときに久しぶりに自分から、何かをしたい!これが欲しい!という欲望が出てきたことが嬉しかった。

カラッカラの喉を潤したい気持ちと、探していたものに出会えた高揚感で凄い勢いでお金を投入して、ボタンを押した。

人生初の葉の茶


初めて飲めた葉の茶は、今まで生きてきた中で1番美味しい飲み物だった。あぁ、生きていてよかった…と思えた。気づいたら泣いていた。

それからの私は、毎日違う自販機で葉の茶を買うことを目標に散歩をするようになった。
あまりの出会えなさにイライラすることも多かったが、それが楽しくなり、習慣になり、#今日の葉の茶 と投稿するようになった。

そんな自己満すぎる行動に、反応してくれる5点フレンズがいることが本当に嬉しかった。
いいねをくれる人、コメントをくれる人、葉の茶を買ったと報告してくれる人。
末端の女のしょうもない行動が、少しでも人の思考に組み込まれていることが本当に嬉しかった。

今でも私は自販機で葉の茶を見つけると買ってしまう。ありがとな、と感謝を込めてボタンを押す。いつ飲んでも変わらない美味しさに敬意を込めて。

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