【第14回】眠りに生きる子供たち

 こんばんは。前回の更新から日が空いてしまいました。
 ご無沙汰しております。みなさま、おげんきですか。

 さて、年末ですね。
 私は昨日、仕事納めでした。今日から待ちに待った冬休みです。
 観たい映画が何本か上映されているのですが、ねむくてねむくてお布団から出られません。自分へのクリスマスプレゼントとして気になっていた本を購入したのですが、目が霞んでもやもやと夢の中へ吸い込まれてばかりいます。冬になり、ますますねむい時間が増えたように思います。8時間たっぷり寝ても足りないくらい毎日ねむたいです。

 みなさまはどうですか?ねむいですか?
 部屋を暖かくしてねむりましょうね。

☆☆☆

 先日、Netflixで『眠りに生きる子供たち』という2019年のドキュメンタリーを観ました。今回はこの作品について紹介したいと思います。

 国外退去におびえながらスウェーデンに暮らす何百人もの難民の子供たちは、"あきらめ症候群"に苦しめられます。つらい現実から逃げるように何ヵ月も、ときには数年にもわたってこん睡に近い状態に陥るのです。まるで冷凍されてしまったかのように...。「眠りに生きる子供たち」は、難病にかかってしまった子供たちとその家族の苦悩の日々を克明に映し出す迫真のドキュメンタリーです。

*ネットフリックスメディアセンター


 ドキュメンタリーでは、3人の”あきらめ症候群”(Resignation Syndrome)の子供とその家族について描かれます。どの家庭も悲惨な出来事の末に命からがらスウェーデンにやってきます。しかし、亡命した先でも難民申請が通らない、本国送還命令が下るなど全く安心できない現実が続きます。子供は恐怖の中で怯えて暮らし、病気になってしまうようです。
 上記の説明にもあるように、この病気にかかった子供は眠りこんでしまいます。突然眠りから覚めなくなるのではなく、徐々に話さなくなり、食事量が減って眠る時間が増えていき、そして眠ったまま目を覚まさない状態に陥ります。
 ”あきらめ症候群”は2003年ごろに現れ始めた、今までにない病気だそうです。調査の結果、外的要因でないことが判明しているようですが、原因は依然として不明。他国での発症も報告されているものの、ほとんどがスウェーデンで発症しています。しかし、なぜスウェーデンで発症するのか判明していません。発症するのは特定の地域、バルカン半島や旧ソ連の南部、そして少数派民族の「心に深い傷」を負った子供です。
 スウェーデンでは長年大勢の難民を受け入れていました。しかし、近年は移民反対の声が大きくなり受け入れは制限が強くなったようです。その結果、過去3年間で”あきらめ症候群”の件数は200件以上増加したとのこと。

 病気の子どもたちは栄養を得るためのチューブを鼻に通し、おむつをはいてベッドに横になっています。
 子供の両親は眠る子供の体をマッサージしたり、動かすことで筋肉を維持させようとします。父親が子供の脇に腕を入れて子供の体を起こさせて、母親が子供の足を動かして子供を歩かせる運動をする。ただ眠っているだけだったら、起きてしまうと思うのですが、この子供は全く起きません。ただ呼吸をするだけです。
 また、母親が医者の指導の下、眠る子供の口内にアイスを入れて嚥下させる練習をします。その間、母親は眠る子供を目の前に思わず涙を落してしまう。医者はそんな母親へ「良くなってきている」と慰めます。

 しかし、この病気は不治の病ではありません。
 ドキュメンタリーで紹介された家族のうち、ひとつの家族では難民申請が認定されて、スウェーデンで暮らせるようになりました。すると両親の安心が子供に伝わったのか、認定を受けて数か月すると病気の子どもは目を覚まし、以前と同じように学校へ通えるようになりました。この病気を治癒するには「希望」が必要なのです。


 私は恥ずかしいことにあまり国際情勢に詳しくなく、難民問題も何も知らないに等しいのですが、紹介された家族の亡命に至るエピソードが深刻を極めており、「つらい」の一言に尽きます。
 子供はもちろん、両親も何も悪くないはずなのです。ただその国で生活をしていた、変わらない毎日を暮らしていただけなのに突如として過酷な状況に巻き込まれて恐怖に襲われる日々になってしまう。過去のトラウマだけでなく将来の不安も強くなり、きっと子供たちは何も考えられなくなってしまったと思います。もう生きていても仕方がないと絶望したかもしれません。
 そうしたら、もう眠るしかないでしょう、と思ってしまいました。眠っていれば何も怖いことは起こらないから。精神が壊れる前に目を閉ざして、ゆっくりと死が訪れるのを待つ。動物として自然な状態なのではないかと感じてしまいました。

 眠る子供の世話をする両親の姿は悲しみに溢れていて、見ている私まで涙が落ちてしまいそうでした。いつか目を覚ますと信じて、挨拶をして本を読んであげて運動をし、散歩にも連れて行く。何か月、数年と反応のない子供へ愛を持って接する。両親だって絶望と常に戦っているに違いありません。

 眠り込んで意識が低下していても、決して外部からの情報は完全に遮断されるわけではなく、ちゃんと子供には両親の声が届いている。しかも形を持たない、目に見えない、人間の「希望」を感じ取って子供が目を覚ますというのは本当に不思議に感じます。救われる思いがします。
 話だけ聞くと、小説の設定ではないかと疑ってしまうような現実が実際にあるのです。人間に触れる、話しかける、そのときの温度や言葉、音、それ以上の情報を私たちは相手から受け取っているのですね。

 もちろん、家族の中だけでは決して解決できない社会的要因が最大の問題です。恐怖を感じることなく安心して楽しく毎日を送る子供が1人でも多く増えてほしいと願うばかりです。

以上、紹介と感想でした。『眠りに生きる子供たち』は39分くらいの短い作品ですので、Netflixを契約されている方はぜひご覧ください。


清水優輝

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