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追悼:マーク・ラネガン

2003年の冬に、まだTBSのそばにあった赤坂ブリッツに、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの来日公演を見に行った。バンドは前年に「Songs for the Deaf」と言う素晴らしいレコードをリリースし、同年のフジロックで初来日。それには行かなかったけど、私は「Songs for the Deaf」が大好きだったのでライブはどうしても見たかった。

ジョシュ・オムとニック・オリヴェリの野獣のような二人が躍動していたライブは素晴らしかった。しかし中でも私が一番感動したのが、マーク・ラネガンだった。

彼は"Song for Dead"のイントロが始まると、タバコを咥えたままステージの上手から中央に出てきた。ステージは曲調に合わせて暗い青色の照明で彩られていた。彼が歌いだした瞬間、私はなにかに貫かれたような感覚を味わった。その歌声はどこか悪魔的なとでもいうか、禍々しいというか、怖さを感じさせるくらいに強烈な彼の歌にゾクゾクし続けた。時折、白くてとても明るい照明が、彼を後ろから照らすと神々しいとさえ思えた。私の視線はもう、彼しか見ていなかった。

一曲歌い終わると、喋ることもなく黙ってステージの脇に引っ込む。そして出番のときだけ、静かにステージに出てきては誰よりも強烈なインパクトを残していく。この日、彼は合計で三曲を歌った(はず。記憶が曖昧で、もしかすると一曲くらいはバック・ボーカルとしての登場だったかも)。そのどれもが素晴らしく、ライブが終わったあとはまるでマーク・ラネガンを見に行ったのでは、と思うようになっていた。

その日のことがあって、私は彼の作品をいくつか聞いた。彼はソロだけではなく、様々な形態で作品を途切れることなくリリースし続けていた。私はやっぱりバンド・サウンドで作られた作品の方に魅力を感じるが、エレクトリック・ミュージックもありルーツに回帰したようなフォークやブルーズもありと、やりたいことをとても自由にやっていた、その人生の歩みはとても幸せだったのではないかと思う。

写真はMark Lanegan Band名義で2012年にリリースされた作品で、タイトルは「Blues Funeral」...。文字がなく、美しい花だけが描かれたジャケットも素晴らしい。私が聞いた彼の作品の中で一番好きなレコードだ。

ありがとう、マーク・ラネガン。どうか安らかに。

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