コロナ後遺症:味覚と嗅覚の障害からの回復について

味覚と嗅覚に障害が出てからちょうど二週間が経った土曜日のことだった。馴染みの店に久しぶりに遊びに行き、味はわからないが酒を飲んで帰った。その帰りにまだ時間があったので馴染みのラーメン屋でビールを呑みながらラーメンを食べて帰った。それだけ食べたのに深夜まで起きていたものだから、またお腹が空いてきてしまった。私は部屋にあった赤貝の缶詰を食べることにした。その缶を開けた時に、かすかではあるが匂いがわかることに気がついた。数時間前まで味も匂いもわからなかったのに、だ。

私は嬉しくてたまらなかった。涙が出るほど感動はしなかったけれども、心からホッとした。このまま戻らなかったらどうしようと思うことも時々はあったからだ。その後、風呂に入り、その時に使ったシェービングジェルや石鹸の匂いがわかった。明日になればもっとはっきりと味と匂いがわかるといいなと思いながらその日は寝付いた。

翌朝起きると、前日に使ったシェービングジェルの匂いがあごヒゲに残っていることがわかってまた安心した。トイレに入るとトイレ掃除用のシートの匂いがわかった。手を洗った時の石鹸の匂いは薄っすらとわかる程度だった。バナナを食べるとほのかに味がわかる。朝食にサラダを食べるために酢と醤油で作ったドレッシング、ミカンもかすかにわかった。ところがそうやって喜んでいると、その日の夜にはまたすっかりとわからなくなってしまった。匂いが戻ったと感じた時に喜び勇んでSNSにそのことをあげてしまったが、まだ早かったようだ。

次の朝になると、また何もわからなくなってしまった。シェービングジェルの匂いもわからなくなった。朝食に食べたものについてはどれも味がわからなかった。残念に思いつつ仕事をし、ミカンを一つ食べたところ、味がわかった。身体の動きが活発になると戻ってくるのだろうか。私はどの匂いならわかりやすく、どれがわかりづらいのかを知りたくなった。味と匂いに対して注意深く過ごしていると、シェービングジェルをなど化学薬品が使用されているものについてはだいぶはっきりとわかった。昼食に食べたものはほのかに味がわかった。コンビニ弁当だったから無添加だったり化調不使用ではないだろう。バナナの味はよくわかならなかった。ミカンもわからなくなっていた。

唐突に自分の大便の匂いならどうだろうと私は思いついた。さすがにそれはわかるんじゃないか。早速、出し終わった後に拭いた紙を鼻に近づけた。ところがそれもわからなかった。信じ難い気持ちが強くなってしまい、紙に着いた便をさらに鼻に近づけたところ、近づけすぎて鼻の頭に便が着いてしまった。しかしそれでも匂いがわからなかった。そもそも便にあまり匂いがなかったのだろうか。

そうやって三日間を過ごしたところ、何となく傾向のようなものがあるように思えた。お酒を呑んだ時や身体が温まってきた時など、血の流れが良くなっている時に回復しているようだ。だとすると朝の寝起きに味と匂いがわかりづらく、昼は比較的わかりやすくなっていることにも一応納得はできてしまう。また、先にも書いたように化学品は比較的匂いを感じやすい。何か特定の成分がそうさせているのかもしれない。

いずれにせよ回復までにはまだしばらく時間がかかりそうだ。食事や生活習慣にも気をつけながら気長に治るのを待とう。今の私にできることはそれくらいしかなさそうだし。

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