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夢の感触

おそらく夢であろうと思うし、夢であってほしいと望む。

そんな出来事が先日あった。

時間は夜十一時過ぎ。

目が覚めた途端、自分の上に誰かいると分かった。
目の前に誰かがいる、それが分かったのに姿が見えない。
けれどその手。
私の手首をガッシリと抑え込まれていた。
しかも両手首。
強い力だと思う。
自分にのしかかる透明の存在に焦りと恐怖が浮かんだ。
まるで透明人間に抑え込まれているようだ。
けれどどこか冷静な自分も居て、大声を出すわけでもなく重さが感じられないと思った。
両手首は動かない。押さえつけられている感触はある。けれど、自分にのしかかっているであろう体重を感じないのだ。
それなのに体を動かせず、その手を振り解けない。強い感触。

手首を握りしめられた感触だけが異様にリアルで、その透明な存在の顔が自分に近づいてくるのが分かった。背ける間もなく、チュッチュッとからかうように唇を合わせてくる。

私に自分の姿が見えないことを楽しんでいるようだった。
間違いなく笑っているであろう。
姿は見えないのに自分と掛け布団の隙間を見て、細身の男だと分かった。

腹が立って嚙みつこうとした、所で解放された。

枕元に置いたままのスマホにLINEのメッセージの通知が表示されていた。


嫌な汗をかいていた。
両手首を思わず見るが痛みは無い。
夢だったんだ、と思いたかった。
夢でしかないはずだ。
LINEのメッセージにコッソリ感謝しながら返信し、何度かそれを繰り返すうちに寝落ちてしまった。






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