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かわいい字

学生のころ、私の字はかわいいと言われ、女の子たちに人気があった。
人気がある字、とはちょっと謎だが「ノートの表紙に名前を書いて欲しい」、「プリクラの落書きは糸ぴんに書いてもらおう」、「歌詞画(流行っていた曲の歌詞が書かれた待ち受け画像。懐かしい)作って」などと言ってもらえていた。

それにしても“人気があった”と我が物顔で言い切るのはどうか。可愛いとざわめかれていた、の方がしっくり来る気もする。これも自分で言うのが恥ずかしいことに変わりない。それに、まあ言うほどではないレベルだ。加えてもうこの歳になると、もう直せない癖字に嫌気がさして幼い頃から習字を習っておきたかったなという気持ちでいっぱいだ。

字のことで覚えている話がある。

当時私には気の合う友人がいて、彼女も私の字を好いてくれていた。彼女と共に、折りたたみの携帯電話(懐かしい)の表面にプクプクペン(と勝手に呼んでいたが正式名称は謎。書いた文字がぷっくりするペン。懐かしい)で文字を書こう!ということになった。もちろん書くのは私だ。

何を書こうかと話し合い、二人とも陸上部なので“一走入魂”(こういうの流行ってた。懐かしい)はどうだ、となったが私がマネージャーのため断念された。二人が好きなバンド、SHAKALABBITS(懐かしい)の好きな歌詞等、たくさん候補が出たものの最終的に“味”という文字を書くことになった。理由は「形も読み方もなんかかわいいから」というものだった。ちなみに私たちは「あじ」ではなく「み」と読んでいた。

そして私たちは自分の携帯の表面に黒々デカデカプクプクの“味”を掲げ、高校生活を楽しむ必需品としてその携帯と共に青春を送った。

今となっては何一つ理解できない全てが懐かしい思い出だ。

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