ミリメートル

随分長い時間が経ってしまいました。後期が始まり、前半のテストが始まり、終わり、返ってきました。


恐ろしい事だよ


なんのやる気も出ないので、授業で取り扱った短い散文を訳しました。作者はリスボンの生んだ大詩人、フェルナンドペソアです。

リスボンの観光地、彼のイラストを見ずに歩くのは無理と言っていいでしょう。山高帽に眼鏡のおじさんです。だいたいデフォルメされて描かれててかわいい。イラスト付きトートバックとか買って帰ろうかな。

前のノートにも書いた気もするけれどポルトガルの未来主義文学を牽引したおじさんです。正直すごく有名な作家がたくさんいるとは言えないポルトガルだけれどペソアの著作は国外でもすごく評価されているし、彼が異名を使って書いたTABACARIA(タバコ屋)は20世紀でもっとも美しい詩の1つと呼ばれているとか。やったねペソア〜

でもポルトガル人の友達に聞いてみるとだいたい「奴の言うことは訳がわからん」と非難轟々。彼がアルバロ デ カンポス名義で書いたode triunfalという詩に出てくる機械の音を義務教育中の授業でモノマネさせられたことがみんなのトラウマになっている様子。

クラムボンマジで何?現象とちょっと似てるのかなと思いました。


文中【空欄】は文字通り空欄です、どうやら未完ぽい。livro do desassossego(sがどう考えても多すぎる)(わたしはtinta da china社出版のやつを買いました)に収録されている短いやつです。くそ短いのに行き詰まるたびに3時間くらい寝たので死ぬほど時間がかかった。


装丁がかわいい〜🥰

日本語訳は 「新編 不穏の書、断章」 として平凡社さんなどから出ているらしいです、普通に早くそっち読みたいな〜〜!! タイトルの訳がもうかっこいいじゃんね


Fernando Pessoa 著 livro do desassossegoより 「Milímetro」

ミリメートル
現在がとても古いように、何事も一度現れれば在りしものとなるから、私は物に、現在を形作るそれらに、古物収集家として興味がある。そして尤もらしく、あるいは正しく科学的で悪賢い説明をつけては物について私の判断を誤らせるようと仕向ける奴へ、コレクターとして憤りを感じる。
宙を飛ぶ蝶が次々満たしていく場所は、空中にはっきりと残ったさまざまなものであるように私の神秘の目に映る。思い出はあまりにも生き生きとしていて【空欄】
ところで、ごくわずかな感覚、それもとてもささやかな何かによって引き起こされた感覚だけに私は頼って生きている。くだらなさを愛している故かもしれない。あるいは細部への用心のせいともいえそうだ。しかし何よりも(わからないし分析などしたことはないが)、そのささやかさが、社会的にも実践的にもなんの重要性も負わされておらず、その重要性のなさによって下品な現実感から完璧に独立しているからこそだと信じている。私にとって、ささやかさとは非現実だ。無益さはうつくしい、有益さよりもリアルではないから。魅力的な無益が微小な栄光のあるところにとどまり、変化もせず、自由に自立して生きている間、有益は有益のままあり続け生き長らえるのだ。無益さとくだらなさは私たちのリアルな人生から、謙虚な美学によって距離をとっている。リボンに刺さった針のちっぽけで取るに足らない存在が、夢や愛でいっぱいの私の魂にとってどれほど非魅力的か!その重要性を知らない者の悲しみといったら!
そして、心地よいまで鋭く痛む感情の中でも、謎の不安はもっともややこしくてくどくどしい。この謎はたとえばちいさいもの、つまり動きがなく謎が透けてみえるほど明らかなものについて考えているようなときには絶対に表れてこない。争いを眺めながらこの不思議な感覚を持つのは特にむつかしい(それでも人間がいて社会があって、それに対する戦いが存在するのは馬鹿げているという思慮は、謎への勝利の旗を心の中ではためかせることにより近い)。道に置かれた石の前でする考え事は、石が存在しているということ以上の考えを引き起こさないので他のことは思い浮かばない。そのまま思考を続ければ、つまり、続いてすぐに、その存在の謎を考えるに至る。
小さい物の内で良いものは、一瞬、ミリメートル、そして影であるが、なにより一番は謙虚さである。一瞬は【空欄】
 ミリメートル…その存在は巻き尺の上にずらっと、距離をほとんどおかずに驚嘆すべき大胆さで印刷されており、わたしをうんざりさせる。時たま苦しめられたり楽しんだりしている。そのことに、粗雑な誇りを持っている。
 私は緩慢に感光する写真乾板だ。詳細まですべてアンバランスに私に焼き付いて、それぞれの全部が芸術になる。私は私によってのみ満たされているだけだ。私にとって外の世界はいつも明確な感覚として有る。感じたことを忘れることは決してない。




マジで何?な文を最後まで読んでくださりありがとうございました。

つまらないものですがこちら、収穫を迎えた試験管ブラシ(赤)です、よかったらどうぞ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?