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着ぐるみアクターはこの先生きのこれるのか

こんにちは、着ぐるみの中の人です。

あっ「着ぐるみの中の人などいない」みたいな冗談は受け付けておりません。今からくそまじめな話をしますので。

この状況下でイベント業は苦境に立たされていますね。支援を訴えるところ、無観客興行を配信するところ、いろいろな方法でこの苦境を乗り切らんと声が上げられているのを聞きます。(演劇界は大炎上してたようですが)

では、着ぐるみアクターはこの状況下でどうなのか?
っていう話ですね。

存在そのものが許されなくなりつつある?

イベントの自粛といえば、3.11のときもイベント業界は苦境とされていました。しかし、今の状況は前回のそれとは明らかな違いがあります。パンデミックに対処するための「防疫措置」が持つ強制力の高さです。雰囲気で自粛するとかそういうのとは根本的にわけが違う。

さて、着ぐるみの仕事は、ざっくり大きく分けて3種類あります。グリーティング・ショー・撮影です。私はグリーティングを主にやっていました。

グリーティングの仕事とは、来場者とのふれあいや撮影の対応といったものです。しかし、これらの行為は防疫面で重大な害があり、テーマパーク再開に向けた感染拡大予防ガイドライン(第7-4項)でも明確に釘を刺されています。パーク勤めでない者がこのガイドラインの遵守する必要はないでしょうけど、クライアントの対応としては同じでしょう。実際イベント無いですし。

一方で、防疫さえちゃんとやれば―――例えば、キャラクターの接触などを制限して運用すれば―――着ぐるみを出す機会は設けられるのでは?と思ってました。

そう思ってるところにこの記事を見てしまったので、困惑しているのです。

 Jリーグが試合再開時の新型コロナウイルス対策として、クラブマスコットの来場禁止を要望するなど、細部にわたるガイドラインを設定したことが28日、分かった。この日、各クラブに向けて説明会を実施。感染防止策として、外部からスタジアムに持ち込む物品や人の数を可能な限り減らすという方針の下、横断幕の持ち込みなどと同じく、マスコットの来場もNGとする方針が示された。

コンコース等に出られないのは仕方がないでしょう。感染拡大防止のためには触れ合ってはならないのは先にも述べたとおり。しかし、コレを読む限り、ピッチにも出られない?遠くから眺めるだけなのに??

まあ、状況を見て緩和されていくと期待したいところ・・・とはいえ、この記事には重要な示唆があります。それは、たとえ各所でイベント再開の目処がついたとしても、客寄せという行為そのものの忌避がついてまわるのではないか?ということです。本来、空席は少ないほうが良いはずなのに、三密を避けることが主眼となると、空席率はむしろ増やす方向に圧がかかる。人の数を可能な限り減らす、とはそういうことでしょう。

着ぐるみの仕事は多くの場合において、客寄せとしての要素があります。
あなたは例えば、休日にショッピングモールにでかけたら、キャラクターショーがタダで見れるのを疑問に思ったことはないですか?
あの手の出し物はパッケージショーなどと呼ばれていて、実は施設側が購入して成り立っているんですね。キャラクターショーって、イベンターが来場者増への期待して導入するBtoB商品としての側面があるんですよ。
もし、客寄せという行為自体が憚られるなら、本当に収束したと判断されるまで、誰がどういう理由でそれを買うのか?この状況がいつまで続くか考えると、なかなかにやばい話だと思いませんか。

最後の砦は撮影の仕事です。これは制限こそあれど比較的被害が少なくて済んでますね。自分が最後にやったのも撮影の仕事でした。それでも3月の話で、撮影以外の仕事だと2月まで遡ります。

強かな戦略はIPを自由に扱えてこそ

さて、自粛中のライブ・イベント業の立ち回りついて追っている人なら、概ね以下ようなことを思いつくでしょう。

「現地のイベントが実施できないなら、ライブ配信を行ったり、グッズを通販したりすれば良いのでは?」

これはその通りだし、実際そのようにしているところは多々あります。
「なら、いいんじゃないの?」と思うかもしれないけど、その恩恵にあずかる人の少なさを考えるとあまり手放しに良いとも言えない実情があります。

前段でキャラクターショーの話をしましたけど、そういうときに行われるショーってどのようなものでしょうか?たとえば、ニチアサのアレとか、ソレとか・・・を、勝手にライブ配信することは、決してできないですよね。なぜなら知的財産権(IP)による制限があるからです。配信をするか?グッズを売るか?それを決める権利があるのはあくまでIPの所有者です。

一方で、キャラクターを担う側がIPを有していれば、柔軟な対応ができる。出演を失ったスポーツマスコットやテーマパークキャラなどは、この方法で糊口を凌いでいることがYouTube等を見ているとわかりますよね。
今の状況下では、自身でキャラクターの権利を持っているところが圧倒的に強いわけです。

他、ご当地キャラや企業マスコットのアカウントを見てると、イベントに出れないキャラクターたちが写真・動画をちょこちょこ上げている姿を見ることができます。しかし、こういったコンテンツは基本的に職員の手弁当で行われていることが多いようで、つまり雇われアクターが携わってないところが多いことが見て取れるんですよ。

なんなら平時より明らかに動きが悪いキャラもいたりして「誰か切られたのかなぁ」と見ながら考えてしまったりとか・・・根拠はなにもないけど、動きを見れば察してしまう。多分みんなわかってて指摘しないんですよね。優しいんです。推しにそんなこと言わない。

グッズの通販などについても、結局、買い支えの利益がどこにいくのかについては一考の必要があるでしょう。アクターがキャラの所属先と共同体であれば共同利益になりえますが、私みたいに担当キャラを転々としてる身だとそうはなりません。(一応、買い支えはキャラクター使用の機運を高めるため巡り巡って利益になる可能性はなくもないです)

当然ながら、雇用関係というのは表から見てわかるものではないです。どんな着ぐるみも「キャラクター」というふわふわした塊として捉えることしかできないのが着ぐるみの世界の常です。なぜなら中の人などいないのですから。

結局のところ「中の人などいない」というのがジョークで済むのは、受け手が何も考えずにコンテンツを享受できる幸せの上に成り立っているものなのかもしれないですね。「中の人などいない」どころか「中の人がいない」になったら冗談じゃすみません。会えなくなるんですよ。わかりますか。

もしもの話ですけど、平時に戻ったとき、貴方の推しの動きが見るも無残なことになっていたら、少しでいいので、そこからいなくなってしまった誰かのことについて思いを巡らせてほしいです。(勿論、そんなことが起こらないに越したことはない)

私が今日言いたいことはそれくらいですね。

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