僕とジョンレノン
両方のお目目から、ハート型に交差して生えたローズマリー夫婦の爽快で清々しい香りが、そよ風のように僕の鼻毛をサヤサヤと揺らしていた。
大、中、小のカラフルな星型の枕がぷかぷかと浮かんでいて、くるくると回る笑顔のうさぎちゃんの向こうで、ピアノに座ったジョンレノンが僕のためだけに歌っている。
全てがピザにとても良く合い、目は漫画のウルウルだ。
「これがヨーコオノの景色か〜♪」
噛み砕いた口の中の水牛モッツァレラをこぼしながらつぶやいたら、BANされたみたいにそれが終わった。
「もう食べながら喋りませんから!」なんて言えない次元の速さで、現実が体に染み込んでくる。
現実でビショビショになった午前10時35分はコードブルー
〜11時にはバイト先のレジにいなきゃいけないのに〜
お笑いの仕事で融通を利かせてもらっていたから、寝坊での遅刻は本当に気をつけていた。
なのに時刻に対して片道徒歩30分のこの状況は寝起きでもめちゃくちゃに震えた。
これはもうさすがに間に合わないか?もう電話した方がいいか?いやでも走れば、、走れば
走れば何分かかるか頭の中のそろばんをはじくより先に玄関にいた。
僕にはチョコザップで鍛え上げられたふくらはぎに一年履いて柔らかくなったDr.マーチン
まさに鬼に金棒、ともしげさんに芝さんだ。
任せろってハナシだぜメーン♪
家を飛び出して懸命に踏み出した左右の足は、大地で音符のようにはずみ、津田沼のコンクリで奏でたのはなぜかロックだった。
まだあたたけえ、近くにジョンがいる。
Imagine there's no Heaven〜♪
It's easy if you try〜♪
天才が譜面の上でなびかせるペン先のように僕は走った。
No Hell below us〜♪
Above us only sky〜♪
さあ俺とジョンのロックを仕上げようじゃないか。
バイト先の扉を開ける
Imagine all the people〜♪
Living for today〜♪
間に合わなかった。
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