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SDGs×ビジネス(67):IPCC 6th と日本のエネルギー政策

みなさんこんにちは!

私はエネルギー企業で事業開発をする中で、エネルギー×SDGs×ブランディングについて考えています。

このnoteは、読んでいただく読者の皆様と共に学び、知識の整理と共有を目的に継続していきます。

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今回はIPCC 6thと日本のエネルギー政策を学んでいきたいと思います。


◇これまでのまとめ◇

・温暖化は人間の影響によるもの(断定)
・ここ数十年の平均気温の上昇が異常=前例のないこと
・2040年ごろには1.5度の気温上昇が起こる

・気候変動問題を抑えるには平均気温上昇を1.5℃に抑える必要がある
・2030年〜2050年にかけて平均気温上昇が1.5℃に到達する可能性が高い
・温暖化を1.5℃に抑制するには2050年頃の二酸化炭素排出量実質0が必要

・50%の確率で平均気温上昇を1.5℃に抑えるのに残り500Gtの二酸化炭素排出に抑えなければならない
・日本は12億t(1.2Gt)程を毎年排出している
・2021年における世界での排出量の見通しは33Gtとなっている

⇒このままの排出ペースだと15年前後で、残りの500Gtの排出枠に達する。
各国に早急なカーボンニュートラル、ネガティブエミッションが求められる。


日本のエネルギー政策

資源エネルギー庁は、2021年7月21日に第6次となるエネルギー計画の素案を公表しました。

エネルギー基本計画は、2050年カーボンニュートラル2030年に二酸化炭素排出を2013年度比46%削減(さらには50%削減の高みに向け努力:2021年4月気候サミットにて表明)という目標に向けたエネルギーミックスの見直しが行われています。同時に、エネルギーが抱える課題として、安全性の確保、安定供給の確保、エネルギーコストの削減を掲げ、これらを克服する道筋を示しています。


2050年カーボンニュートラル実現に向けて

2050年に向けては再エネ原子力などの脱炭素電源の活用と、水素・アンモニア発電CCUS/カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求します。

非電力部門については、電化を推進し、脱炭素化された電力によりカーボンニュートラルに貢献します。電化ができない領域については水素や合成メタンなどの活用により脱炭素化を推進し、最終的に排出が避けられない分野はCCUSや植林にて対応します。


2030年46%削減に向けたポイント

需要サイドでは徹底的な省エネを図るため、省エネ技術開発・導入支援の強化、建築物省エネ法の規制措置強化、電動車・インフラの導入拡大、電池等の電動車関連技術・サプライチェーンの強化などを図ります。

エネルギーにおいては、再エネを主力電源と位置づけ、最優先にて取り組みを進めます。その中で、地域と共生する形での適地確保、事業規律の強化、コスト低減・市場への統合、系統制約の克服、規制の合理化、技術開発の推進などの課題を克服・取り組みを加速します。

火力については、エネルギー安定供給のために必要最小量の稼働を行いながら、電源構成に占める割合を引き下げていきます。稼働を継続するものについても、高効率化、水素・アンモニア路の混焼技術の確立やCCUS措置の促進を行い、既存火力よりカーボンニュートラルに貢献できる火力を追求します。

原子力については、社会的な信頼の確保と安全の確保を大前提に取り組みが行われます。原子力発電は二酸化炭素排出を伴わないため、カーボンニュートラルに向けては、すでに技術が確立している貴重な電源となります。カーボンニュートラルにおけるエネルギーの安定供給の貴重な電源を、今後どう位置づけるか、福島の対応を含め動向が注目されます。

水素・アンモニアは2050年カーボンニュートラルを見据えて、最も期待されているエネルギーの一つです。2030年に向けては、その社会実装を加速させ、調達から消費までの実用化を行います。中長期的な水素の供給コストと供給量については以下のようになっています。

コスト:100円/Nm3(現在) ⇒ 30円/Nm3(2030年) ⇒ 20円/Nm3(2050年)
供給量:200万t/年(現在) ⇒ 300万t/年(2030年) ⇒ 2,000万t/年(2050年)

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2030年46%排出削減というのは野心的な目標となっていますが、理想論といえどIPCCの今回の報告書に基づけば、世界の残りの排出枠は500Gt、そのうち日本が12億t=1.2Gt排出しているものが、2030年に46%削減の0.7Gtほどになったとして、先10年で10Gtに迫る二酸化炭素を排出することになるかもしれません。

仮に世界中すべての国が日本と同じスピード感で二酸化炭素排出削減に取り組んだなら(仮定:2030年46%削減、2050年カーボンニュートラル、2020年排出量33Gt)、2030年における世界での排出量は約18Gt、2050年カーボンニュートラルにおける累積排出量は435Gtとなり、50%の可能性で1.5℃の気温上昇に抑えられる可能性が高まります

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しかし、あくまでこのシナリオは世界中すべての国・地域において、日本の野心的な目標と同じペースで二酸化炭素排出削減が達成された場合の話です。先進国と途上国なにおいては、その発展度合い、排出削減の技術的な部分含め、同じ目標を一律で追求することはできません。だからこそ、先進国にはもっと野心的な目標が求められると思っています。

エネルギー基本計画に基づいて、2030年排出46%削減を達成する意味は非常に重大きなものです。企業の中には再エネ調達などを前倒しのスケジュールで進める企業も見られますが、こういった報告に基づき政府から何らかの取り組みが示される際には、先行して取り組む企業がメリットを受けることが多くなるでしょう。

昨今の日本における豪雨被害も、このまま気候変動問題が進んでしまえば、こういった災害級の雨が当たり前、日常になってしまいます。もはやこれは遠い未来ではなく、10年を切った未来の話になります。

私たちが安全に住み続けられるよう、私・自社にできることというのを追求していきたいと思います。次回からは、脱炭素において大きな期待が寄せられている水素を取り上げていきたいと思います。





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