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夢の話

3連休の1日目、昨日は一日中寝ていた。
正解には18時間くらい。
何度か起きては、見ていた夢を反芻して、また寝ていた。
夢を見ない日はないし、私は夢の内容をよく覚えている方だ。
覚えていない夢は、そもそも見ていなかったのか忘れただけなのか、その証明は不可能なので、今まで見た夢の内、どの程度を夢を記憶できているかはわからないけれど。
まあいいや。
昨日の17時頃に見た夢が、久しぶりに興味深く、身体にも少し感覚が残っているため、記憶が新鮮な内に記録しておく。
夢の話なので、真剣に間に受けず、また読みづらいことも理解してほしい。
もっとも、これを読む他人がそういないことを都合良く利用し、私も読みやすさに関しては配慮しない。
自身の記憶の定着と再生のためにのみ、記録を残す。



鍾乳洞の中のように、冷たい空気が流れている場所だった。
雪の寒さとも違う、静かで澄んだ冷たさだった。
ドーム状の広い空間だけれど、暗くて、天井は見えなかった。
今考えると、あそこは本当に鍾乳洞の中だったのかもしれない。
大きな空間の一番奥には、ステージかのようにそこだけ地が平らで、洞中を見渡せる高さにあり、薄白い照明で照らされた箇所があった。
そして、その証明の光が、ステージの周りの積水を、より青々と光らせていた。

夢の中にありがちなことだが、通常の頭では決して信じないようなことを、あるがままにすんなりと受け入れてしまうことがある。
前頭前野が不活発で、認知機能が落ちているためだ。
今回の夢の中の私も同じく、"私が質量を殆ど持っていない"という点に、全くおかしなことだと気づかなかった。
しかし、それでは私は空気のように空を飛んでしまうことになるが、夢の中の私が身につけているものによって、それは防がれていた。
それは、両腕にあった。
詳細に言えば、それは着物の振り袖のような形状で、両腕で対になるように3つずつ、計6つの袖が手首から二の腕までのところに着けられていた。
作り物の羽根のようだった。
生地は白く、よく見るとほんの少し金糸が混じっており、透ける薄さでできていた。
腕以外の箇所も、同じ素材の生地が巻かれているような作りだった。

そして、その6つの透けた振り袖のような生地の中に、それぞれ異なる鉱石が詰められていた。
それら石の重みで、私は地上に留まることが叶っているのだと、不思議なほどに即座に、夢の中の私は理解した。

それでも私の身体は軽かった。
鍾乳洞の中を飛び回り、石灰でできたステージに横たわって時々身体を休めた。
広く青い積水の中を、袖の中の鉱物で切り裂きながら泳いだ。
水の中でも、少しだけなら呼吸ができた。
水も空気も澄んでいて、冷たくて、心地良かった。
水滴が遠くで落ちる音が洞内に響く。
全てが美しく、全てが調和しており、全てが私のもので、私はあの場所の一部だった。

場面が突然切り替わった。
場所は同じ鍾乳洞のままだった。
けれど、様子が変わっていた。
洞内は人工的にライトアップされ、青を基調に、赤や紫、緑のライトで装飾されていた。
さらに、大勢の人間がいた。
装飾された石灰のステージを中心に人々が集まり、積水の中を歩いて回ったり、水浴びをしたり、ステージ上の催しに拍手や歓声を投げかけたりしていた。
彼らの服装は現代人のそれとは異なっていたが、そんなことは夢の中の私は気にも留めなかった。
私は彼らを排除しなければならないと思った。
どうしてかはわからない。
けれど、たしかに、彼らはこの場所に不要だった。
ライトアップされていても、まだ洞内は薄暗かった。
私は、積水の最も暗い場所から潜り込み、彼らを襲った。
私が彼らの隙間を縫うように泳ぐと、袖の中の鉱物が彼らの脚を切りつけた。
彼らは私が何者なのか、そもそも何が自分たちを傷つけて回っているのかさえ気づいてない。
私は飛び魚のように水面から飛び出し、そのまま空を飛んだ。
邪魔なライトを壊してまわる。
悲鳴が聞こえる。
私はまだ空を飛び回る。
水と空気が、冷たさを取り戻しつつあった。
流石にいよいよ疲れて、肩で息をしていると、まだ生き残っていたらしい青年に肩を掴まれた。
青年の手のひらは熱く、少し不愉快だった。
私は彼に向き合った。
足元の水が青く照って、表情の見えない青年の顔を映しかけた。
私は彼の腕に手を置き、それから彼の首に腕を回した。
そして、そのまま彼を抱きしめて倒れ込み、一緒に水に沈んだ。
それほど深さはないけれど、暗かった。
冷たい水の中で、彼だけが温かった。
この場所では彼はいつまでも異物で、それは仕方のないことだと思った。

彼の力が弱まってきた時、私は初めて、袖の中の鉱物が殆ど無くなっていることに気づいた。
彼から離れると、私は浮力で水面に浮き上がった。
そして、そのまま宙に浮いた。
もう地上を歩くことはできないと悟ったが、べつにそれで構わないと思った。
元の冷たく、青く、美しい鍾乳洞を見下ろしながら、私はゆっくりと上昇していった。
そこで目が覚めた。


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