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【雑記】パッションフルーツ

パッションフルーツが好きだ。

香り、味、食感。見た目はあまり好きじゃない。蛙の卵みたいで。美味しさを知らなければ食べてみようなんて思わない。

好きなものリストに積極的に入れていた訳ではなかった。
何となく子供の頃から好きで、最近になってなんとなくパッションフルーツのドライを買って食べてみたらはまってしまった。こんなに美味しかったかな。砕かれる種の食感もカボチャの種のようで軽く重く楽しめる。

生のパッションフルーツを買ってみた。
ドライフルーツは砂糖浸けになっているから美味しく感じるのかもしれない。沖縄の茶色い皮の、手のひらサイズの小振りなものを箱で買った。玄関に届くと、すぐにむせ返るような濃厚な香りが広がる。まだ箱を開けていないのに。

やはり好きだな、と思った。

食べてみても、酸味も甘味も、南国の香りも、パーフェクトだった。きっと最後の晩餐に選ぶと思う。


ただ、どうしても何故これが好きなのか分からない。

思い返してみれば、子供の頃からトロピカルフルーツジュースが好きだった。たまに食卓に登場する特別なジュースだった。嗅いだことの無い刺激的な香り。100%オレンジジュースしか冷蔵庫に入っていない日常に彩りを添えてくれる。あのワクワクした気持ちは覚えている。

学生になると、トロピカル味のジェリービーンズが大好きだった。パッションフルーツ、ココナッツ、マンゴー、グァバ、その他柑橘類の味。どれも好きで、大事に一粒ずつ食べた。途中で食べかけの袋を鞄にしまっておくと、開けたときトロピカルな香りが広がる。少しだけワクワクした。

大人になって、暫くして、もうあまりワクワクすることもなくなって、デパートの地下でパッションフルーツのドライパックを見つけた。少しだけ気になって買ってみた。とても美味しかった。その普通の一袋、一粒が輝いて見える。とても大切なものになる。

学生の時のように少しずつ大切に食べた。食べる度に私は何処かに旅に出掛けている心地だった。それは子供の頃のジュースの思い出なのか、もっと何百年も前の誰かの記憶なのか、本能が求めている栄養素がしみわたっていく光景なのか分からないけれど。

身体を離れた心は解放されていた。

私はパッションフルーツが好きだ。


fin.

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