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古い傷には軟膏を / #この春チャレンジしたいこと

ニート。無職。金なし。カードローンあり。
限界点のギリギリを生きているけれど、深夜に決心して、iPad Pro を購入した。

ずっと言い出せなかったことがある。
本当は、私は、イラストを描いて生計を立てたかったということ。

中学生の頃、一度、親に話したことがある。将来、絵を描く仕事したい。
その時返ってきた言葉は、「それで食べていけるの?」だった。

大人になった今なら分かる。自営業で収入が不安定な親にとっては、私には安定して生きてほしかったのだ。会社に就職して、安定な賃金を得て欲しい。複雑な家庭環境もある。だから、「ちゃんと」生きてほしい、イラストは趣味でも描けるだろうと、そういった顔をして。
親が与えるやさしいやさしい愛情は、毒となる矢に変化して、夢見る若輩者に相応に傷をつくった。

イラストを描いて生計を立てられる人間が僅かにしかいないことはやんわり知っていた。単行本を売ることが出来るのも、連載を続けられるのも選ばれた人間だけだと。ただ、わたしは知っていたつもりで分かっていなかった。自分もそれになれると、過信していた。

私はその日から、イラストはたまに描けども、イラストを学べる専門学校も芸大も芸術学部も、進路志望書から消した。勉強せずとも入れる、そのへんの大学に入った。美術部にも美術イラストサークルにも入らず、ひたすらバイトをして大学生活を終わらせた。大学に入った頃から、絵を描く頻度ががくっと落ちた。就活も、クリエイティブ系・印刷などハナから選択肢になかった。誰でも出来るような仕事が出来る業界に行った。ふとこの間パソコンを引っ張り出した。中学生の頃に誕生日におねだりして買って貰ったペンタブレットは、薄く埃を被っていた。
社会人になって絵を描いた回数は、片手で収まるほどだった。

夢を見ることは傷つくことなのだと思った。
傷は、大人になった今でも消えることがなかった。

ただ、その深い傷が薄くなった出来事があった。
幼少の頃、イラストを描く仕事と言うと、イラストレーターか漫画家、アニメを描くひと、などしか知らなかった。
が、いまはそうではない。大SNS時代、インターネットが発達した。いわゆるプロではなく趣味でイラストを楽しんでいるような一般的な方々が、自分の経験則、キュンキュンする恋愛漫画、ライフハック、スカッとする話、なにかへの使用感レポート……そういった共感性の高いイラストや漫画を描いて、投稿して、生計を立てている。そういったものが、沢山流れ込んできた。それを知ったとき、右手に握る目の前のちいさな液晶がキラキラして見えた。

やりたい。やってみたい。
わたしも、生きがいとすら思ってたイラストと、大好きなインターネットを使って、私の絵を見てもらいたい。あのとき見ることをやめた夢をまた見たい。

いいや、また絵を描きたい。

そこからは早かった。
パソコンも古いものだし、この機会に、と、iPad Proを購入した。Apple Pencilも、お絵かき用の手袋も、ペーパーライクフィルムも。あとでキーボードも買おう。
お金が無いから、分割払いフル活用だけど。

先人たちがたくさんいるこの世界に飛び込むことは遅いと言われている。いわゆる成功も、選ばれた側の人間しかできないこと。もう理解した。大人になったから。理解したうえで、飛び込んでみたい。そう思ったのだ。

iPad Proが届いたら、まずは、ブランクのリハビリを兼ねてすきなものを存分に描きたい。これからどう道を辿るかは、そこから考えるとして。いまは、ぱったり辞めてしまった絵を描く感覚を、絵を描く楽しさを、とりもどしたい。


ああ、届くのが楽しみだ。人生やりなおしの春がもうすぐ来る。

古い傷には軟膏を塗る。
私の場合は、ペイントを塗るんだな。

有名になれたら、見つけてください。

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