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噂ちゃんの冒険


“噂は一人で歩いていく。“


レベル1初期装備の「噂ちゃん」は、歩いて歩いてたくさんの人に出会い、どんどんレベルアップして行く。


「噂ちゃん」の手に握られていた木の棒は、今では大きな剣に変わり、甲冑を身にまとい周りの音がどんどん聞こえにくくなった。


そんな「噂ちゃん」は、歩いて歩いてわたしの元に帰ってきた。帰ってきた時、わたしの知っている「噂ちゃん」では無くなっていた。


歩き始めた「噂ちゃん」を必死で引き止めたあの時、少しだけ振り向いた気がしたけれど、「もう、どうでもいいや」などと自暴自棄になり、わたしは「噂ちゃん」の小さくなる背中を見送った。「言わせておけ」と思った。どうせすぐ帰ってきて忘れられるだろうと思った。



再会した「噂ちゃん」の大きな剣はわたしに突き刺さり、重装備のせいでわたしの叫び声は届かなかった。
まるでありえない強さになっていた。「噂ちゃん」の尾ヒレは、隣町まで続いていた。もはや原型などない。不特定多数が一個人を傷つける為だけのトゲだらけだ。


わたしともう1人の人間から産まれた「噂ちゃん」は、わたしの名前の旗を掲げてたくさんの町を巡った。


たった二人の間で産まれた「噂ちゃん」の活躍で、計り知れない量の人間から指を刺されることとなった。

わたしはあなたの事を何も知らない。
あなたもわたしの事を何も知らない。


あなたやわたしが知らない誰かへ思考力を止めて放った矢が、確実に一矢誰かの背中に刺さる。

刺さっている。


最後まで読んで頂きありがとうございます。
またいつか。

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