もっと食うための現代大食技術論番外編第12回「中華そばべんてん」

 名物と言っても、地元民は別に大して食べてなかったり、実は本当の発祥は別の地域だったりする御当地グルメもあります。

 例えば東京のお土産にひよこ饅頭がありますが、東京の人がよく食べているという話は聞きませんし、そもそも本家は博多です。高校時代修学旅行で東京に行った時、バスガイドのお姉さんの発言に突っ込みが多数入った(生徒の半数が福岡出身)のが懐かしいですね。お間違いのないようにお願いいたします(笑)

 では真の意味での東京名物とは何か。私は勝手に、「油そば、つけ麺、ラーメン二郎」だと思っています。東京発祥である根拠がありますし、地元民は勿論全国的にも愛されている料理であるからです。

 油そばとの出会いは以前書いたので、今回はつけ麺との出会い。上京したての頃、友人達の会話で「つけ麺」という言葉が出てきても、私は「つけうどん」のことだと思っていました。2000年代中盤につけ麺ブームが広まり、九州や北海道などの地方にも広まったという記述を見受けるので、おそらく私が上京する前は、中華そばの「つけ麺」を提供するお店自体が地元では皆無だったと思われます。

 苗場、リトルショップ、そば処満留賀と、大学付近のデカ盛り店を将棋部の先輩方に連れて行ってもらっていたのですが、将棋部内で特に話題になっていたお店が、つけ麺界の伝説とも言われる「中華そばべんてん」でした。

 当時は高田馬場にあり、連日行列ができる大人気店。味の良さもさることながら、とにかく量が多い。将棋部のS先輩が大盛りを食べきったと聞いて、自分も挑んでみたいと思ったのでありました。

 大学近場のお店ではないので、予め場所を調べてから一人で訪問。自主的にデカ盛りにチャレンジしたのは実はこの時が初めてでした。

 食事のために行列に並ぶという経験もこの時が初めて。年季が入り過ぎて最早竹竿だけになってしまった暖簾。嗅ぎ慣れない魚介の匂いがプンプン立ち込める店内。当時の私にとって何もかも新鮮な体験。基本的にあちこち外を回るのが好きでなかった私が、全国を遠征するまでになったのも、思い起こせばこの時の出来事がきっかけだったんですね。

 大盛りは中盛りを食べた人しか注文できないので、この時は中盛りを注文。当時は茹で前の麺量が並350g中650g大1000g。中でも普通のラーメンの4杯、大に至っては7杯くらい。それでいてお値段は大でも1000円以下。リトルショップの時も大概でしたが、私の中で「大盛」の概念が崩れ去った瞬間でした。

 つけ麺用に濃縮されたつけ汁に、ぷるぷるの極太麺(つけ麺業界的には中太麺くらいですが、豚骨ラーメンの極細麺に慣れている私には極太にしか見えない)がよく絡む。「つけうどん」をイメージして、がっつり食べるには物足りないものをイメージしていた私。ここでも良い意味で完全に裏切られました。東京にはこんな美味いものがたらふく安価で食える。「リトルショップ」の時に続き、またしても感動してしまったのでありました。

 これなら大盛りもいけるだろうと、次の週末には大盛りに挑んだのですが、中盛りの量を過ぎたあたりから、急に胃が重くなったような感覚に襲われます。ご飯物なら少しずつでも飲み込めば喉を通りますが、麺なので咀嚼が必要。しかも何度も咀嚼しているとつけ汁だけ先に喉を通ってしまうので、小麦の味しかしない麺を食べる羽目になります。最初のうちはするする食べられても、ペースが落ちると途端に食べられなくなるのがつけ麺。私はこの理由から、麺と汁が分かれているタイプの麺類の大食いは未だに苦手です。

 結局この時は完食できずに撃沈。一人分の料理として出されたのを食べきれなかったのも初めての体験。この時の経験が原因か定かではありませんが、再度「デカ盛り」に挑むようになったのは、デカ盛りという言葉が世間に浸透し始めた2006年(大学4年時)になってからでした。

 2006年6月、大盛りリベンジ決行。再訪を決めた理由が、当時麻雀の勉強会に参加していた早稲田大の友人から「べんてん」の名前を聞いたため。訪問前日に寮の友人の部屋で「めざましテレビ」が映り、そこで「べんてん」が紹介された時には、とんだ偶然もあったものだと驚いたものですが、つけ麺がまさにブームになっていた時代であったことを踏まえると、至って自然な流れだった気もします。(当時は「ごくせん」ブームでもあったので、ごくせん=極太麺1000g=べんてんの大盛りというギャグでべんてんが紹介されていたのも見ましたね。)

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(画像は「テラめし倶楽部」より引用)

 デカ盛りブログを始めるようになり、以前よりは胃袋のキャパが増えた自信もあったのでこの時は無事完食。しかし当然お腹はパンパン。食事が終わったら麻雀格闘倶楽部を打つ予定でしたが、急遽寮に戻って休憩。腹が減っては戦はできぬけど、腹一杯でも戦はできぬ。しかし美味いもので腹を一杯にする快楽は何事にも代え難い。「麻雀ガチ勢」にならなかったのも、デカ盛り巡りとの両立が難しかったからであると今更ながら気付くのでありました(笑)

 

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