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新麻雀徒然草第34回「インベイジョンブロック構築の流行に学ぶゲームのあり方」

 私のHN「ネマタ」はインベイジョンブロックのカード、木立ちの守護者ネマタ/Nemata, Grove Guardianから来ているのですが、このカード自体はトーナメントで使われた試しのない、お世辞にも強いとは言えないカード。この名前を名乗るようになった理由は、当時の2chのTCG板で、「ネタにマジレスかっこ悪い」→「ネマタ」という言い回しが流行っていたためだったりします。

 当時はオンラインでMTGを遊ぶ環境が無かったので、大会に遠征した際の合間にやることと言えば、ゲーセンでMFCを打つか、ネカフェからハンゲームの麻雀を打つか。いつしか麻雀がメインになっていったのですがそれはまた別の話。MTGは毎年新しいカードが発売されるので、最新のカードが使用できるルールが主流になるのですが、最近話題になっているのが、2000〜2001年にかけて発売された、「インベイジョンブロック」のカードのみが使用できる限定構築戦。

 話題となった発端は来月に草の根大会が開催されることが決定したからなのですが、全国のカードショップでインベイジョンブロックのカードの売上が急増するなど、局地的な流行に止まらない勢いを見せております。

 20年前の構築形式がここまで注目を浴びるようになった理由として、二つの側面から取り上げます。一つは、「様々なデッキが活躍するバランスの取れた環境であった」ということ。一部の戦略が強過ぎると、本命デッキと、本命デッキに対抗するためだけのデッキに二極化してしまい、健全な環境でなくなるということは以前取り上げた通りです。

 環境の中心となる有力なデッキタイプが15種類もあったとされるインベイジョンブロック(対して2004年のミラディンブロックは精々4種類くらいしかなかった)。その理由の一つが、「最有力とされるアーキタイプ(デッキの種類)が、環境内で『最遅』であった」ということが挙げられるでしょうか。上記の記事にある通り、ブロック内のカードが全部揃ってから開催されてから開催されたグランプリの優勝デッキは4つとも遅いコントロールデッキ。うち2つはメインにクリーチャーカードを1枚も入れず、土地と妨害用のカードと妨害用のカードを引くカードばかりを詰め込み、勝負を決めにいくカードが2〜3枚(しかもそのカード自体も相手の攻撃を防ぐコントロールとしての役割がある)という徹底ぶりです。

 低速デッキは言い換えれば、安定感は高いが爆発力に欠けるデッキ。低速は中速に有利、中速は高速に有利、高速は低速に有利という話を以前やりましたが、低速<高速<中速<低速…という感じで上手い具合に三すくみの関係になり、様々なデッキが活躍するバランスの取れた環境になるということです。高速デッキが爆発力だけでなく安定感まで手に入れてしまえばこうはなりません。

 「多色環境」であることも、デッキの多様性を保つ機能を果たしていると言えます。必要な色が多いカードほど使えるデッキが限られるので、カードパワーを上げてもそのカードばかりが使われる環境にはなりにくい。当時のルールであれば2色のカードは最低でも2マナ、5色のカードは最低でも5マナというようにコストが重くなりがち。強力なカードを大量に入れようとするほど「低速」に傾き、低速デッキほど選択の機会が増えるのでプレイングが難しくなり、デッキのバランスも保ちづらくなるので構築難易度も高まります。グランプリ優勝こそ遅いコントロールデッキ大半を占めましたが、構築やプレイの難しさもあってか、全体的な使用者で言えば中速デッキが多かったというのもこの環境の特徴でした。

 20年前の構築形式が注目を浴びるようになったもう一つの理由。それは、公式が存在し、当時の記録、情報が充実しているので、当時から遊んでいたプレイヤーもそうでないプレイヤーも共通の話題で盛り上がることが出来るということに他なりません。2003年に大学に入学してからMTGを始めた私にとって、2000〜2001年の環境は記録でしか知る手立てが無いのですが、ただひたすら懐かしく、当時の熱狂ぶりを追体験したいという思いが込み上げてきます。MTGに限らず、当時の記録が歴史として残されることで、地域や世代を超えて話が弾むことほど楽しいものもありません。

 環境的な理由で麻雀以外のゲームから距離を置き、10年以上麻雀記事を取り上げてきた私ですが、もし20年前に戻れるのであれば、麻雀はそこそこに留めてもっと他のゲームをやり込みたかったというのが正直な感想です。麻雀と比べて極めてプレイ人口が限られているゲームでさえ、昔の話題でこれだけ多くの人が盛り上がっているのですが、麻雀において、「20年前のトピック」を取り上げることが出来る人が果たしてどれほどいらっしゃるでしょうか。20年前はおろか、5年前ですらだいぶ怪しいものです。

 「最近の麻雀界」は盛り上がっているか。客観的に見れば間違いなく「YES」ですが、かつて熱狂的なプレイヤーの一人で、未だに麻雀記事を書き続けている私としては首肯けないものがあります。10年以上の活動の中で多くの麻雀仲間に恵まれ、未だに交流がある方も少なからずいるのですが、彼らも今となっては口にするのは他のゲームの話ばかり。共通の話題で盛り上がれたかつての熱狂的なファンが外へ出ていくことほど寂しいものもありません。

 時計の針を戻すことは出来ないので、「当時もっと他のゲームで遊びたかった」という私の願いを叶えることは出来ません。出来ることと言えば、「当時から麻雀を続けてきてよかった」と思えるようになること。20年以上前からの麻雀、MTGファンとして、①ゲームは自由に遊べるという価値観の浸透②ゲームを楽しく遊ぶための環境の整備③ゲームの歴史を誰もが振り返られるようにするための情報収集 今後も①〜③について微力ながら尽くしていきたいですね。

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