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靴下

 私は靴下が好きだ。するりと履いたり、つるりと脱いだり、するりとつるりを繰り返したり。するりつるり。豊かで面白い。

 友達にそんな話をしたら変な顔をされたけれど私は微塵も傷付かなかった。自分でも驚くくらい。どうせなら私は靴下になりたい。誰かにするりと履かれて、つるりと脱がれたい。するりつるりと。そんな思い、この世界で誰かが抱いていたって問題ないでしょう?

 靴下、靴下、靴の下。靴の中なのに靴の下。変で面白い。

 サンタクロースは私にプレゼントを入れるのだ。きらきら光る宝石みたいなたくさんのプレゼント。子供たちはたくさん喜ぶだろう。そんな時、私は赤と白の靴下で、だからきっと頬を赤らめているのだ。

 そうだ、靴下になろう。そうしてぐっすり寝てしまおう。誰かに見つけてもらえるまで。誰かに履いてもらえるまで。誰かの靴下になれるまで。そうして脱いでもらえるまで。私、きっと、いい靴下になれると思うんだ。だって、私、するりとつるりについてこんなに考えてる。

 仕事のことや世界のことはひとまずいったんぜんぶ忘れて。温んだり汗ばんだり。誰かの足下で澄ました顔で。昔読んだ漫画みたいな、夢のあるような不思議なやつ。

 靴下。

(2023.4.16)

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