愛が欲しい
わたしは愛が欲しかったのだ。誰のものでもない、わたしだけの愛。傷つけても、守っても、揺らいでも、嘘をついても、何をしても自由な愛。わたしはそれが欲しかった。
郊外のワンルームアパートの窓辺から夜を眺める。わたしのすべて。これがわたしのすべて。この窓辺から見える景色がわたしのすべて。それがいい。そういう感じがいい。わたしにとって、それは愛。愛を感じるもの。
切れかけのフィラメント、まばらな人影、コンビニエンスストアの灯り、自動販売機の唸り声、高架下の囁き、そのすべてがわたしの愛。わたしはわたしを愛している。なのに、愛が欲しい。
"愛はきっと奪うでも与えるでもなくて、気が付けばそこにある物"。いつかの流行歌の旋律が頭をよぎる。気がつけばそこにある? あるのかな。わたしの愛。愛。
あなたのことを考える。さようならと言ったあなた。愛していると言って去ったあなた。愛しているならそばにいて欲しいと思うのはわがままだろうか。本音ではあるけれど。そうやってわたしの過去は彩られてきた。
さようなら。愛している。そんな言葉、いらないよ。それは伝わるもの。透明で不可思議な内緒ばなし。
わたしは彩られてきた。過去に。それらを一切捨ててしまおう。そして抱きしめよう。抱き止めよう。愛。それがわたしの愛。どこまでも続く永遠。わたしの愛。
揺るがずにいてね、わたし。しなやかに。あなたがいなくてもどこへでもいける。わたしはひとり。それでもあなたはそばにいる。いつだって。
さようなら。愛している。そんな言葉、嬉しかったよ。ありがとう。
そうしてわたしは眠る。永遠の中で。夢の中へ。まどろみ。退屈。わたしのすべて。愛しています。心から。
さようなら。また会う日まで。永遠の中で。
(2024.4.13)
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