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3000円のタイピンを贈る“感謝格差”社会の弱者

先日、僕の部下が退職した。

彼は非常に優秀な人材で、僕のこれまでの部下の中でダントツだった。どれくらい有能かというと、彼のしたいことをチームの柱とするだけでどんどん実績が上がっていくくらいだ。

誰もが将来の幹部だと太鼓判を押していた。もちろん僕も同意だった。

それほどに出来る彼だから、今の環境に満足できるわけもなく、転職となってしまった。

実績に対し給与が大きく連動するわけではないので、彼は不満だったのだろう。その気持ちはわかるし、申し訳なく思っていた。だから、僕は止めなかった。

しかし、僕の上司は彼を引き止めようとした。

退職願を一旦保留し、数日考えろと言ったらしい。まあ、その気持ちもわかる。親心もあっただろう。なんせ金融機関は我慢して退職まで勤務すれば、ある程度安定した老後が見込めるのだから。

そんな引き留めも虚しく、彼は退職することとなった。僕はチームのメンバーに、彼に贈り物をすることを提案した。

彼はサッカーが好きなので、サッカーに関するものがいいと考えた。そこで、日本代表がスーツを着るときに身につける、公式のネクタイをプレゼントすることにした。

このネクタイはもちろんブランド物で、僕らみたいな田舎の会社員からみれば決して安くはない。でも、彼が僕とこのチームに与えてくれた恩恵からすればタダみたいな金額だ。代金の3/4は僕が負担することにした。最も恩恵を受けていたのは僕だからだ。

彼はとても喜んでいた。帰ってから子供にも自慢したとのことで、贈り手としても嬉しい限りだ。

そして、部署全体での送別会が開催された。そこで、部の親睦会費からプレゼントが贈呈されることとなった。

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