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空っぽの役員が見せてくれた、吐き気のする絶望劇場

役員に言われて絶望的な気分になるワードというのがある。

僕にとってのワースト1は決まっている。

「上がなんていうかだなあ」

だ。



かつて、厳しいことで有名な支店長がいた。

その支店長の評判(悪評)は全社的に轟いていて、部下になる=「死」であると認識されていた。

実際に精神に不調をきたし長期離脱する人もいたし、あまりのストレスで極寒のなか雪の中で倒れた人もいた。それくらいの人物だった。

仕事に厳しく、部下に厳しく、そして上司を立てる人だった。

上司を立てると言っても派閥があるから、自分が属する派閥の上司は立てるけども、そうでない上司については裏で悪口を言っていた。まあ、それはそんなものだと思う。

おどろいたのは、自分の派閥のトップが失脚したとき、それまで蛇蝎のごとく嫌っていた役員に擦り寄っていったことだ。

「なんちゅうわかりやすい人だ。誇りとかないんか?」

そう思ったが、まあ仕方ない。そうまでして彼は役員になりたかったのだ。

そして、うちの会社のほぼ全員が役員になって欲しくないと願っていた彼は、ついに役員になった。

部下を徹底的に追い詰め続けて30年。上司の靴を舐めるが如く過ごした30年。そこまでのものを払って、彼は役員になったのだ。

当然、役員になったら実現したいことがあるはずだ。

それはこれまでの自分のスタイルを全社的に浸透させることかもしれないし、先進的な企業体質への転換なのかもしれない。経営について文句ばかり言っていたから後者なのだろう。

そう思っていたが、特に何も起こらない。そのうち、彼とある融資案件で絡むことがでてきた。

私が案件を説明し、「これは結構ハードな案件なんですよ。役員に理解してもらう必要がありますね」と言うと、彼はこう言った。

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