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旅行記 / 紀勢 紀伊半島をぐるっと一周 (2021/05)

紀伊半島を一周して、潮岬にも行ってみたいということで。


私の住んでいるのと同じ近畿圏にある和歌山ですが、あまり行くことのない土地です。紀伊半島の南のほうと来たらなおさらで、和歌山で言えば白浜、三重で言えば伊勢より南側は未踏の地域でした。雨がよく降る所、ぐらいの印象です。

今回はそんな近くて遠い紀伊半島を一度ぐるっと一周してみようと計画してみました。それと天気予報の時によく聞く、本州最南端である潮岬も訪れてみることに。紀勢本線経由の名古屋~和歌山のきっぷを買っていざ出発…!

何に乗って、どこへ行ったか

● 主なJR路線:関西本線、紀勢本線
● 主な私鉄路線:名古屋市営地下鉄、伊勢鉄道、紀州鉄道、和歌山電鐡、南海電車
● 主に行った場所:ナゴヤドーム、新宮城跡、熊野速玉大社、潮岬、白浜温泉、鬪雞神社
● バランス:[観光] ・・★・・[鉄道]

◆Day 1◆ ガイドウェイバスゆとりーとライン

2日間で紀伊半島を一周するにあたり朝一に名古屋を出る計画としたので、前日入りすることにしました。もちろん(?)新幹線ではなく近鉄の急行をひたすら乗り通すことに。時間はかかるけどもぼちぼち行くのも楽しい。

名古屋に着いてから「ドニチエコきっぷ」を買い地下鉄の未乗区間に行ってみました。まずは鶴舞線の丸の内~上小田井の間を単純折り返し。上小田井から先は名鉄線に入るので、ホームは地上にありました。

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上前津まで戻ってから名城線で大曽根へ。ここから一つ乗りたかった路線があって、それは「ゆとりーとライン」です!

ゆとりーとラインは大曽根~小幡緑地のガイドウェイバスと、小幡緑地から先の路線バスが一体となった路線。ガイドウェイバスは、名前も見た目も「バス」ではありますが扱いの上では鉄道の方に近いらしく、停車するのは「駅」です。…うーん、やっぱりバスとしか思えない。

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道路(軌道?)の両端にはガイドレールが付いていて、それに沿ってバスが進んでいきます。運転士さんが一切ハンドル操作をしないのが新鮮。鉄道のような速度制限標識もありました。

前面展望をしてみるとこんな感じ。雰囲気はモノレールみたい?

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路線バスには特に興味がない(というかその先へ行ってもやることがない)ため、「鉄道」区間終点の小幡緑地で折り返すことにしました。小幡緑地の駅を出るガイドウェイバスを眺めていると、地上へ下りて普通の路線バスに変身していました。地上へ下りる道路は阿佐海岸鉄道で見たような感じ

折り返しついでに敵地視察をば。プロ野球12球団本拠地巡りの一環として、ナゴヤドーム(バンテリンドーム)へ行ってみました。ちょうど試合終了のタイミングで人が多かったです。

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ナゴヤドーム前矢田から名城線の右回りに乗車。栄などの繁華街に近いためか、左回りの方が混んでいました。ぐるっと一周したかった私にはちょうど空いている方で良かったです。

初日はこれで終わり、翌朝は早めなのでさっさと寝ましょう。

◆Day 2◆ ワイドビュー特急で和歌山県へ

早朝の名古屋の地下街は、さすがにほとんどお店が開いていませんでした。人もまばらな地下街を通って名古屋駅へ向かいます。


まずは快速みえ51号に乗りました!一応臨時列車ということになっていますが、ほとんど毎週の土休日に運転されています。この日も例に漏れず走ってくれました。

快速みえは参宮線方面の伊勢市や鳥羽まで行く列車で、紀勢本線と分岐する多気までの停車駅はなんと特急南紀と同じ!多気までこれに乗れば、その先から特急に乗るにしてもちょっと安く上がるんですよね…!

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今回は多気まで快速みえに乗り、多気から特急南紀に乗ることにしました。途中駅で下車して散策ができるという点でも、こうして乗り継ぐ方が私には好都合です。ちなみに快速みえには指定席もあるので、どうしても座りたい時には指定券を購入すればOK。

途中の河原田から津までは伊勢鉄道の線路を通ります。ここはJRの路線ではないため、青春18きっぷが使えないことに注意。車内での精算が必要です。普通にきっぷを買う際には伊勢鉄道の運賃が加算されています。

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車窓から見えるのは一面の田園風景でしたが、直線が続いて速かったです。伊勢鉄道の運賃を支払うことがもはや特急料金の代わり、みたいな感じ。JRから経営分離していなければ運賃的にも近鉄と対抗できたのでは…。

多気で下車して駅前をうろうろ。駅構内にあった、「多気に来た。」という見事なネーミング(?)の観光パンフレットもめくりつつ、特急南紀を待ちました。こういうローカルなモノに出会えるのも途中下車の魅力です。


特急南紀はワイドビュー車両で、車両と座席を選べば前面展望も可能です。私は窓が広く(つまり前に窓枠がなく)前も見える4号車2A席をチョイス。この列車は座席番号がややこしいので予約する際は要注意です。不安な方は窓口で「こういう席が良いです!」と希望して買うのが確実でしょう。

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選んだ席にはもう一つこだわりがあって、進行方向左側、つまり海側です。途中から良い景色を眺められるのも期待してこの座席にしました。空いてて良かった。

隣には誰も座らなかったので、身体をちょっとずらして前の座席の隙間から前面展望もしてみました。この先どんなところへ連れて行ってくれるのか、わくわくします。

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梅ヶ谷からしばらくの間は進行方向右側の景色が良さそうでした。トンネル続きでなかなか見づらかったですが…。長めのトンネルでも運転席の後ろのカーテンを閉めないのが意外でした。


日本屈指の多雨地帯として有名な尾鷲などのある東紀州に入っていきます。同じ三重県にある四日市出身の友人に言わせれば「外国」とのことですが、田園風景だけではなく沿線には街が広がっていました。

そして徐々に海が近くに見えてきました!雲ひとつない青空のもと、新鹿(あたしか)海岸の砂浜がめちゃ綺麗。海岸に差しかかる直前に車内の電光掲示板に案内が流れていました。これは一見の価値ありです。

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海岸地形の影響で三陸鉄道のように短いトンネルの連続です。地図で見るとほぼ海岸線を走っているのですが、海の見える場所はあまり多くありませんでした。

下車する新宮駅の手前で、熊野川を渡った直後にトンネルに入る場所があり驚きました。市街地近くでこういった構造はなかなか珍しいのでは?

新宮の街をぶらり

どこへ行くかは特に決めていなかったので、まずは目に入った新宮城跡へ。とりあえず城、はわりとよくやります。

新宮城跡は小高い山の上にあり、登っていくだけで疲れました。もう一つの趣味である合唱もこの時節柄、縁遠くなってしまっているので最近は体力が目に見えて衰えてきているように思います。…合唱はスポーツですよ?


で、熊野川を渡った直後にあったさっきのトンネル、実はこの地下を通っているんです!写真に見えているのは道路橋ですが、この道路橋から城の方を眺めると紀勢本線の鉄橋がバッチリ見えました。良い写真が撮れるかも?

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熊野川が三重県と和歌山県の境界です。川を眺めている間にちょうど正午になったようで、時報のメロディーが両岸から同時に聞こえてきたのですが、別々のメロディーでしかも調性(キー)が半音だけ違っていたので頭が混乱しました。

山を下りてしばらく歩き、次は熊野速玉大社に参拝に行きました。世界遺産だそうで丹塗りも鮮やかで綺麗です。

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「梛(なぎ)みくじ」という、変わった形のおみくじがありました。旅先の神社ではついつい引いてみたくなります。

近くには趣ある雰囲気の商店街が。日光に当たりすぎたせいか看板の文字が消えかかっています。こういうアーケードや商店街にわりと惹かれるんですよね!

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ちなみに詩人の佐藤春夫は新宮出身とのことで、生家跡には「誕生の地」の碑がありました。

新宮駅まで戻ってきて次の列車に乗りました。新宮駅からはJR西日本管内となり、走る普通列車もJR西日本の車両です。翌日に行った御坊駅まで何度か列車を乗り換えましたがすべてこの227系でした。代表として一枚、写真を置いておきましょう。

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どうやら新宮から先の方が海がよく見えるようです。雄大な太平洋が眼前に広がります。

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見ているだけで清々しい気分になりますね!

串本からレンタサイクルで潮岬へ

串本で途中下車してちょっと寄り道をば。本州最南端の潮岬を目指します!コミュニティバスの時刻を調べてみましたが、絶妙に使いづらいので今回はパスしました。

その代わりに、駅のすぐ横にある南紀串本観光協会にてあらかじめ予約しておいたレンタサイクルを貸し出してもらって出発。前年の室戸岬以来、移動手段としてのレンタサイクルのありがたみを実感しています。

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和歌山県道41号線は潮岬周遊線と呼ばれていて、沿っていけばぐるっと一周できます。今回は往復ともに西半分だけ走ってみました。

坂を上って早速海がよく見える場所へ。アップダウンがわりとありましたが自転車が電動アシスト付きだったのでとても楽でした。というかそもそも、電動アシスト付きに乗ったのが人生初でした。

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まずは潮岬灯台へ。灯台の中の螺旋階段で上の方まで行くことができます。この螺旋階段、一段がめちゃ高くてしかも幅がめちゃ狭い。上る時は気合が必要です。

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でも上りきった後の上からの眺めは格別ですよ!

灯台から5分ほど自転車を漕いだところで、ついに本州最南端に到達です!石碑がドンと座っています。テレビの天気予報で毎日見る潮岬にも、これで親近感が湧くようになるはず。たぶん。

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近くには潮岬観光タワーがあり、その上からは広大な太平洋を眺めることができます。記念証みたいなカードももらえました。

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タワーの横には南紀熊野ジオパークセンターもあり、少し覗いてみました。室戸岬に続いてジオパークセンター巡り(?)も楽しんだ後、再び自転車を漕いで串本駅に戻ります。

白浜の海鮮と温泉を満喫

串本から普通列車で白浜まで行き、そこからはバスに乗って温泉街へ向かうことにしました。ほどよく疲れて少しうとうと。

この区間の列車からでも海がよく見えます。晴れていれば良かったのですが、この日は徐々に曇ってきてしまっていました。1時間ほどで白浜に到着です。


駅前のロータリーと周りの建物が絶妙に古めかしくて気になったので写真を一枚。白浜まで来たことはあるものの、当時は列車ではなかったので今回が初の白浜駅でした。もっとキャピキャピした観光地の雰囲気なのかと思っていましたが…。

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バスに乗ると目に入ったのはご当地感のあるバス車内掲示。夏は海水浴客もバスに乗るんでしょうね。(…水着のままで…?)

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お宿にチェックインしたら晩ご飯を物色しに外に出かけてみました。やはり海の近くということで魚を食べたい気分になって、「フィッシャーマンズ・ワーフ白浜」内にある「Ban-ya(番屋)」に入りました。

注文したのは丼と刺身と小鍋まで付いたセットです!味が良いのはもちろん値段も良心的でした。ちなみに右上に写り込んでいる日本酒は別料金です。紀州五十五万石をいただきました。美味しい。

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白浜温泉は「日本三古湯」の一つだそうで、残りは有馬温泉と道後温泉とのこと。有馬には日帰りで行ったことがあるので、あとは道後に行けば三古湯巡りを達成できます。実は愛媛県自体が未踏の地でもあり早く行ってみたい温泉です。

お宿のお湯はもちろん白浜温泉。強い硫黄の香りが温泉感を醸し出していて良かったです。

◆Day 3◆ 雨の紀伊田辺で途中下車

この日は朝から雨が降ってきてしまいました。お宿は素泊まりプランにしていたので、朝風呂だけ楽しんでから出発。

で、予定ではとれとれ市場でまたしてもお魚をいただこうかと考えていたのですが、まさかの臨時休館という悲しい事実を知ってしまい、早めに白浜を出ることに決めました。この時点で朝食難民と化しました。


駅の売店で売っていた新名物「アイスかげろう」を仕方なく朝食代わりに。食感は面白かったですがもう少しボリュームが欲しかったです。

列車に乗り込んで終点の紀伊田辺まで行き、一時間ほど散策してみることにしました。雨の中の散策は、傘を差さなければいけないのが若干面倒臭くてテンションが下がり気味になります。

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世界遺産である鬪雞(とうけい)神社に参拝しました。困ったら城か神社。神社の参拝は逆に雨の中ぐらいの湿っぽい時の方が、荘厳な感じが出て良いかもしれません。

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駅に戻って、次は御坊行きに乗りました。行き違いで駅にやって来たのは「パンダくろしお」号です。ここまで間近で見たのは初めて。前面はパンダ顔になっていて、側面にはアドベンチャーワールドの動物たちがラッピングされています。

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紀伊田辺から複線となり、岩代~切目のあたりではほぼ海岸線沿いでした。

御坊から紀州鉄道に乗る

終点の御坊から、日本一短い私鉄…だった(過去形)紀州鉄道に乗り換え。レールバスのLE-DCシリーズが現役で、この何世代か前の感じがする車体を見た時に思わずテンションが上がりました。雨などなんのそのです。

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本当に半ばバスのような車両に揺られつつ進んでいきます。特にスピードを上げることもなく、住宅地と田畑の中をゆったり走っていきました。

前のほうに座って前面展望をしていたところで驚いたのが、踏切の遮断桿が下り始めるのが車両が通過する直前だったことです。危なくないか?


そしてわずか8分ほどで終点の西御坊に到着しました。駅舎の天井がめちゃくちゃ低い

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下の写真右側の掘っ立て小屋…と言えば大変失礼ですが、この傾きかけ?の質素な建屋が駅舎です。車体の高さと比べてみるとその低さがよく見えると思います。

あと、車止めがめちゃくちゃ近いです。少しでもオーバーランすればすぐに乗り上げてしまいそう。

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かつては西御坊からもう少しだけ線路が延びていたそうですが、もう今では走ることはありません。ただし線路はちょっと残されています。


乗って折り返しはあまり面白くないので、昼ご飯を探すついでに御坊駅まで歩いて戻ることにしました。入ってみたい所がなかなか見つからずネットでラーメン屋を検索。

…しかし行ってみるとここも臨時休業!仕方なく駅まで戻ってみると、横にうどん屋「いきいきうどん」を発見しました。どうやらチェーン店らしい。うどん好きの私としてはこれは入るしかない。

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「紀州ぶっかけうどん」を大盛り(3玉!)680円でいただきました。安くて美味しい。梅干しがさっぱりといい働きをしてくれています。もう1玉なら余裕でいけそうでした。

御坊駅からさらに北上して和歌山駅へ向かいます。紀伊半島一周もそろそろ大詰めです。

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駅で列車を待っているとオーシャンアローが発車していきました。パノラマグリーン車、乗ってみたいですね。

和歌山電鐡でニタマに会いに行く

和歌山駅から今回の旅で最後の乗り鉄路線、和歌山電鐵に乗り換えました。数年前に一度乗ったことがあり、今回は再訪という形になります。単純往復するだけで元が取れる一日乗車券を買ってホームへ。

停まっていたのは「うめ星電車」でした。これから乗る和歌山電鐵貴志川(きしがわ)線は元々南海の路線で、車両も南海から譲り受けたものです。うめ星電車はそれを近年改装したもの。

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改装のデザインは、見ただけで分かりますが恒例の水戸岡鋭治氏が担当しています。全国各地に水戸岡氏デザインの列車が走っている今日この頃、乗るたびにワクワクするのですが、失礼ながらちょっとワンパターンな感も否めないんですよね…。前も似たようなやつ乗ったぞ?みたいな。

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車内はこんな感じ。木の窓枠や椅子の背もたれの形状など、いかにも水戸岡氏といった雰囲気です。

途中の伊太祈曽(いだきそ)駅では向こうからチャギントン列車が登場しました!そういえば岡山にもいたな?と思って調べてみると、岡山電気軌道が和歌山電鐵の親会社だったんですね…。恥ずかしながら初めて知りました。なるほど岡山でもたま電車が走っていたわけです。

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終点の貴志駅では駅舎がネコ風になっています。かつての猫駅長「たま」が最近の猫ブームの火付け役だったそうです。

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たまは既に他界しており、今では後継の「ニタマ」が駅長になっています。少し前のニュースで見ましたが、和歌山県から「ナイト」の称号をもらって「ニタマ」と呼ばれるようになったとか…。

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ちょっと目つきが怖い。

折り返しの列車で和歌山駅まで戻り、和歌山市駅まで移動しました。大雨が降っていて雨音が列車の音をかき消すほど。前日までの青空がウソのよう。一日ずれてたら大雨のサイクリングになるところでした。


そして南海電車の特急サザンで難波へ。サザンは8両編成で、和歌山方4両は指定席のクロスシート車両、大阪方4両は自由席のロングシート車両です。

和歌山市からだと終点なので確実に座れて、しかも先頭車両も自由席なので前面展望もできるというお得感があります。ただ大雨で前はよく見えませんでしたが…。

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難波まで約60分、JR紀州路快速の和歌山~天王寺よりも20分ほど早いです。無事に帰って来られたので今回はこれでおしまい。


念願の紀伊半島一周を達成、いろいろ街歩きや乗り鉄もできて満足でした!内陸に住んでいる身としてはこうして海沿いへ旅行に行くと楽しめますね。

次は、九州北部の鉄道を乗りつぶしに行った話を書きます。

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