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失敗

「あれ、外出中だったの?」家の近くで後ろから声をかけられて振り向くと、ユウカがいた。片手に洋菓子店の箱を持っている。ユウカから近くにいるから行ってもいい?と電話が来たのが30分前。慌てて着替えて化粧して飲み物を買って帰る所だった。「家にお酒類しか無くって。慌てて買ってきたところなんだけど、丁度会えて良かった。」と言うとユウカは笑って「いいのに。お土産にチーズケーキ買ってきたけど、ワインでも合いそうな感じなんだ。」女性として酒類しか無いってどうなんだと言われそうだが、ユウカも飲める方なので本当にワインでも良かったかも知れない。慌てなくても良かったはずだ。慌てなければ失敗する事も無かった。まさか家に着く前にユウカに会ってしまうとは考えてなかった。私は雨上がりであちこちにある水たまりと足元を見ながらユウカに聞いてみた。

「慌てて失敗したなぁと気付いたら、ユウカならどうする?」彼女は唐突な質問に考えているようだ。「どうしようって考え続ける?どうして失敗したのか問題追及する?それとも次頑張ろうって前向き?」聞きながら玄関の鍵を開ける。ユウカは私の後ろで立って待っている。「どうかな。失敗の種類にもよるかも。でもどうして?何か買うもの間違えたの?」ドアを開けて、ユウカを部屋へ招き入れる。玄関でマイバッグを開いてコーヒーと紅茶を見せた。「大丈夫じゃん。どうしたの?お金払うの忘れたとか?」私は首を横に振って、靴を脱ぐ。「行く途中で気付いたんだけど…家に戻るのもなぁと思って、もう堂々としてたら誰も不自然に思わないだろうと思う事にしたの。でも正直に言うわ。実はね」と言いながら玄関に上がってユウカの方を向いた。

「靴下左右間違えてた。」赤い縞の右足と黒い縞の左足を揃えて見せた。

え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。