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パン祭り [朝の逆転]

さて、どうしよう。

玄関横にある非常用の食料が並ぶ棚は上段をパンで埋め尽くされていた。角食、バゲット、エピ、クルミやドライフルーツ入りなど名前の分からないパンが山盛りだ。

とりあえず朝食にどれを食べようかと手に取ってみると角食以外はカチカチに固い。クルミ入りはずっしりと重くエピは尖った部分が刺さりそうだ。昨日は確かに美味しそうだったパン達が見ているだけで朝の胃に重くのしかかる。

少し身体を動かしてから食べようとゴミを出しに行くと清々しい陽光に頭がすっきりする。まずは美味しいコーヒーを入れよう。コーヒー豆も棚にあるんだっけ。

コーヒー豆を探しながらそびえ立つパンの山を見ているとガチャッとドアが開いた。

しまった、ゴミ出しの後に鍵をかけ忘れた!

見知らぬ男が玄関に一歩踏み込む。男から目を離さぬまま、私は咄嗟に手につかんだ物を投げつける。クルミパンが男の顔面に当たった。

「痛っ」

さらに手につかんだバゲットを振りかぶり男の頭めがけて振り下ろす。後退りした男のドアにかけられた指を打つ。打つ。打つ。

「ぐがっ」

うめき声を残し男の姿がドアの向こうに消え、急いで鍵をかけた。走り去る足音を聞いて大きく息を吐く。

玄関には砕けたクルミパン。手に持っていたバゲットは、あんなに殴ったのに無傷だ。…勝った。

今後もパンは玄関に常備しておこう。防犯用に。


毎週ショートショートnoteを発見したので、勝手ながら参加しちゃいました。かなり減らしたけれど文字数オーバーです。残念!





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