サラダバス / 毎週ショートショートnote

ハッと目を覚ました。
窓の外は右も左も濃い緑色だ。
…寝過ごした。
とりあえず降りようか。いや、こんな森の中じゃ次のバスもタクシーも無いかも知れない。
とりあえず運転手に相談しようと立ち上がる。
「走行中は立たないで下さい。」
車内を見回すと他に客はいない。
「すみません、寝てしまって乗り過ごしたみたいで。」
「大丈夫です。そのまま座っていて下さい。」
どう大丈夫なんだ。バスはすぐに停車すると服を着たゴボウと人参が乗ってきた。
何だか怖くなって立とうとするが
「立ち上がらないで下さい。そのまま、そのまま。」
と、運転手はバスを走らせる。
次の停留所ではキュウリ。
「そのまま、そのまま。」
その次は茹で卵。
「お疲れなんですよ、そのまま。」
次の次はミニトマト。
「大丈夫。サラダバスですから。」
レタス。
サラダバスって何だ。
「もう降ろしてくれ！」

ハッと目を覚ました。
窓の外は見慣れた街並み。
いつの間にか膝の上にゴボウサラダのパックが置かれていた。

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